東京オリンピックのメダルラッシュをみて胸が熱くなる。出場している選手全員にそれぞれにドラマがあって、出場するまでにはわたし達が想像できないほどの努力と共に汗や涙を流してきたのだろう。
嬉し涙や悔し涙を流す選手をみて、スポーツとは縁遠くなってしまったが、わたしは汗水垂らしてひたすら前を向いていたあのころのことを思い出す。
「高校生の頃の一番の思い出は?」と聞かれれば、わたしは迷わず「部活動」と答えるだろう。
高校2年生の夏。あっけなくインターハイ連続出場の記録は途絶えた
高校生の頃、とりあえず運動部には入っておこうと軽い気持ちでその部活へ入部をした。
入部してみると想像を絶するほどハードな練習。インターハイには連続出場している強豪高校だった。
放課後はもちろん、土日は大会や遠征。
夢にみていた花の高校生活は部活一色になった。
よくある少女漫画にあるような高校生活に憧れていたのに。
それでもチームメイトにも恵まれ、部活動は楽しかったので続けていた。もちろん「インターハイに出場できたらいいなぁ」くらいの気持ちだった。
正直入部した頃はインターハイを舐めていた。わたしの所属していた部活はマイナースポーツで、バレーボールやテニスみたいに競争率が高いスポーツではないし、それなりに頑張れば出場できる大会なんじゃないか?と。
しかし高校生2年生の夏、補欠メンバーとして挑んだ大会で、インターハイ連続出場の記録が途絶えた。
その後レギュラーメンバーになってはじめての国体予選でも、全国大会出場の切符を手にすることはできなかった。
あの時の顧問の呆れた顔は忘れることはない。
悔しかったのに、あっけなくて涙も出ず、ただ汗だけが流れた。
夏の大舞台はそんな簡単に辿り着ける場所ではないと思い知らされた。
死に物狂いで練習した1年間。待ちに待ったインターハイの予選
「インターハイ出場を目標にすれば、それ以上の結果なんてついてこない。インターハイで優勝するくらいの気持ちで挑まないと、その前の結果なんてついてこないよ!」
コーチに言われた言葉。
まさにその通りだと思った。もちろん勝ちたいと思い練習をしてきたけれど、その先のことなんて考えていなかったのかもしれない。
それから死にものぐるいで練習した。それぞれの弱点を出し合い、重点的に練習をした。持久力を上げるためにランニングや筋トレにも力を入れた。
大変だったが、その頃から毎日練習が楽しくてしょうがなくなった。
そして最後の夏、インターハイ予選の日がやってきた。
3年間の集大成。
もちろんインターハイへの途中経過とはわかってはいるものの、「もしかしたらこの試合で最後かもしれない」と思うと試合の前は震えがとまらなかった。
しかし、いざ試合がはじまるとその震えもなくなり、一試合一試合を大事に、この仲間達と一緒にで戦えることを全力で楽しんだ。
そして試合終了のベルが鳴った。
大量の汗とともに大粒の涙が溢れた。
接戦の上、優勝したのだ。
インターハイ出場の切符をようやく手にした瞬間だった。
初めて経験した嬉し涙。全力で頑張った部活生活に全く悔いはない
仲間と泣きながら抱き合ったのは今でも鮮明に覚えている。
人生で嬉し泣きをしたのははじめてだった。
嬉しくて涙が溢れてくるという経験をはじめて味わった。
そんなわたし達をみて、
「なんでこんなところで泣いているの。次(インターハイ)が本番でしょう?」
と顧問が冷たく言い放った。
その時の顧問の目にはうっすら涙がみえた。汗ではなかったと思う。
とても嬉しそうだった。
結果インターハイは3回戦で負けた。接戦で迎えた試合終盤、あと一歩というところだった。
もう一度あの場面からやり直したくて、悔しくて、試合終了と同時に泣き崩れた。その日はしばらく立ち直れなかった。
しかし、汗水垂らして全力で頑張った高校の部活生活には全く悔いはない。
それは日々の練習にも自分のベストを尽くすことができたからだと思っている。
あのとき敗北を味わっていなかったら?
勝つ喜びをこんなにも噛み締めることはなかっただろう。
そしてインターハイという大舞台で、悔しいという気持ちが生まれることもなかっただろう。
社会人となり、スポーツとは縁遠い生活になったが、青春を共にした仲間は今でも頻繁に連絡をとるほどのかけがえのない親友となった。
4年に一度のこの時期、オリンピックで汗を流しながら、嬉し涙や悔し涙を流す選手をみると、あの夏を思い出し、さらに胸が熱くなるのだ。