「あの人みたいになりたい」
誰にでも、そう思える存在がいるのではないだろうか。
私も、祖母のようになりたいと思いながら生きてきた。
テレビのインタビューで「あなたが憧れている芸能人は?」というのを見かけたことがある。

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インタビューされている人はどの人も、芸能人を一人しか答えない。
しかし、ロールモデルを一人に絞ろうとする必要はない。
私には、祖母以外にもロールモデルとして当てはまる人が何人もいる。
親友や恩師、テレビの向こうの女優さん。

それはもう、数えきれないくらいいる。
人は皆、それぞれその人にしかない魅力をもっている。
モノマネ芸人さんのように、ロールモデルそっくりにしなくていい。
完全にその人になろうとするのではなく、「その人の魅力的な部分をお手本にしたい」というスタンスで大丈夫。

お手本にするときにも、注意することがある。
それは、"完全一致"を目標としないこと。
それから、ロールモデルと今の自分を比較しないこと。

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小学生のときに通っていた習字教室。
いつも教室に入る瞬間から、張り詰めた空気を感じていた。
横に置かれたお手本を見ながら、真っ白い半紙に集中してひたすら書く。
3年間通って、毛筆以外の文字もきれいに書けるようになった。
大人になった今でも、字がきれいだと周りから褒められる。
でも、あの頃は帰宅すると毎回ぐったりしていた。

「いかにお手本とそっくりに仕上げるか」
「どうしたら先生に手直しされなくて済むか」
そんなことを考えながら過ごす1時間。
周りを気にしながらの環境と、習い事ならではの「お手本通りに」が、私を疲弊させたのかもしれない。

「完全にその通りにしなくていいんだよ」と、あのときの自分に言ってあげたい。
お手本はあくまで模範。見習いたいと思うもの。

完璧なんて、目指さなくていいのだから。

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それは、ロールモデルにも言えること。
たとえば、私は祖母の性格やその生き方に魅力を感じている。
私と祖母は違う人間だから、まったく同じ性格にはなれないし、完全に同じ生き方もできない。

祖母には祖母の、私には私の魅力があるから、それを交換することもできない。
だから、相手と自分の魅力を比べなくていいし、お互いに「こういうところが素敵だよね」と穏やかに意見を言い合うのが理想。
結局は、私自身が「どうありたいか」を考えて、それに近づけるように自分のペースで日々努力していけばいい。
今もっている私らしさを活かしつつ、祖母の魅力的な部分を参考にしていけたらいいなと思う。

見た目や内面、考え方。
素敵だと思える人が、この世界にはたくさんいる。
この先の人生の中でも、そういう人にもっと出会えるのだと思うと、すでに今からすごくワクワクしている。

私にとって、人生はまだまだ長い。
もしかしたら、今後、自分にとってのロールモデルが変わっていく可能性だってある。
生を振り返ったときに、自分がどんな人間になっているかを楽しみにしながら生きていきたい。