高校の頃、いわゆる受験英語が嫌で仕方なかった。

中学の時と比べると単語は一気に複雑に長くなり、長文読解は一文がやたら長い。毎日の予習は高校生活の中でもトップ3に入るぐらい苦行だった。授業で当てられたときに困らないように、置いていかれないように危機感に晒されながら、ノートと電子辞書、テキストの本文にかじりつく。
進学校の授業を受けているけど、スピードが速いばかりで何も頭に残らない。力が付いている気が全くしない。そもそもこんな形ばかりの勉強で話せるようにならないだろう。

英語だけが海外の人と会話してつながるツールなのか?英語以外の語学を勉強してみたい、と最初に思ったきっかけだった。

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大学に入学後、フランス語を第二外国語で選択した。選んだ理由は何となく。響きがよくて滑らかな発音がいいなと思ったのと、ヨーロッパの中だったらおしゃれな雰囲気があるフランスに1番行ってみたいと思ったからだ。
初回のフランス語の授業で、私は衝撃を受けた。自己主張の強さが本来の私と同じレベルで、英語よりは少しマイルド。でも芯の強さはあるという感触。感覚的に英語よりしっくり自分に馴染んでいる気がした。
担当の日本人の先生は教え方が上手く、難しい発音のコツもすぐにつかんだ。ユーモアたっぷりにフランスに行った時の話をしてくれるので、1コマ90分はあっという間だ。週2回のフランス語の授業が毎回とても楽しみだった。

大学ではネイティブの先生が教えてくれる必修の英語の授業があり、そちらも高校時代に比べればずっと楽しかった。

でも、私の興味は完全にフランス語の方が上回っていた。小テストは着実に点数を落とさないようにし、授業で学んだことを全部吸収する勢いで2年生まで勉強していた。

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2年生の終わりに学科選択がある。私は仏文科を含め、いくつかの学科で迷っていた。

仏文科も行きたいけど、私は一体そこで何がしたいのだろう。フランスの言葉や文化、食べ物、偉人、観光地など興味があることはたくさんあるけど特に強いテーマがあるわけではない。
生半可な気持ちで行って、卒業後の進路はどうするのか。あまり先が見通せなかった。
そしてあるニュースが決定打になり、留学するのに躊躇してしまった。パリの街中で火炎瓶が飛び交う激しいデモの映像を見て怖くなってしまったのである。私はまだ死にたくない。結局、違う学科に進んだ。大学3年生から社会人5年目まで、ほぼフランス語に触れない生活が続いた。

再びフランス語への熱が戻ったのは昨年2022年。コロナ禍や円安の影響を受けて、ますます海外に行く壁が高くなった。このままじゃ一生フランスに行けないかもと心底感じた。
20代後半になり、1つ目標ができた。30歳の誕生日はフランスで過ごすと。

目標が定まれば、行動は早い。仕事の合間を縫いながらフランス語の勉強を再開させ、フランス語検定に挑戦した。1度はあと数点で不合格だったが、2度目の挑戦で何とか合格して自信がついた。

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大人になってからフランス語圏の国に滞在している日本人の方と、SNSを通して繋がった。彼女たちのSNSからは遠い異国で母国語ではない言葉を使って、日々懸命に暮らしている様子が鮮明に伝わってくる。彼女たちと比べて圧倒的にリアルなフランス語に触れる量が少ないのは事実だ。しかし、それが逆に原動力になり私も負けないように頑張ろうとモチベーションになった。

今は語学学習のアプリやSNSで、フランス語の勉強を継続中だ。この夏はパスポートを取得し、フランスに行くための資金をせっせと貯めている。

私の夢はまだ道半ばだ。実現する日まで地道にコツコツやるしかない。今日も語学学習のアプリを開いて、スマホに向かって話しかける。