企業で新卒採用を担当していると、いろんな学生さんと話す機会がある。
素晴らしい経歴を持った学生たちは、期待に目を輝かせながら、時には不安そうな顔をしながら話してくれる。この子たちはどんな思いで就活をしているんだろう。本音を聞きたくても聞き出せず、もどかしい思いで面接を終えることがほとんどだ。就活をしていた数年前の自分を思い出して胸がキュッとなるときがある。

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大学4年生の頃、奨学金の返済説明会に参加した時に自分が返済する金額を見て、ものすごく不安にかられたことを覚えている。せっかく就職先が決まったにも関わらず、マイナスからのスタートに感じて悔しかった。

私が高校3年生の夏に、「東京の〇〇大(私立)に進学したいんだけど」と言った時、両親は少し頭を抱えていた。なんだかんだ地元にある大学に行くと思っていたらしい。

最終的には奨学金を借りて乗り切るということになって、家族みんなが私の選択を応援してくれた。大変な状況の中、学費の用意とサポートをしてくれた両親には本当に感謝している。私がもう実家には戻ってこないかもと思いながら、応援する決心をしてくれたのかもしれない。

あの頃私の周りはみんな進学するために必死に勉強していた。あれだけ頑張れたのは、大学に進学したら人生が大きる変わることを知っていたからだと思う。SNSやテレビで見た都会に憧れて、地元を出たいと思っていた子もいたかもしれない。

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就活中はとにかく地元に戻りたくなくて東京の企業を中心に受けていた。今戻ったら、もう一生東京で働くチャンスが掴めない気がして怖かった。
企業説明会やインターンシップに参加したり、夜な夜なエントリーシートを書いて応募したり……。やっと面接にこぎつけても、ダメだったらどうしようという不安に押し潰されそうだった。

無事に内定をもらったときは家族に喜んで電話した。と同時に奨学金の返済が肩に重くのしかかった。
私が進学した大学には私立の一貫校や海外出身の子が多くて、大学に入った時にこんな世界があったのかと驚いた記憶がある。高校までずっと地元の公立学校に通っていた私には、彼女達は別世界から来た人達に見えた。今振り返ると、大学時代は心のどこかでその子たちに追いつきたいと思っていたことに気がついた。なんとなく階層の壁みたいなのを感じていたのかもしれない。

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就活中は応募した会社からお祈りメールが届くたび、なんとも言えない気持ちになった。(まあなんとかなるだろう)と思う楽観的な自分と、(次ダメだったら心が折れそう……)と思う弱い自分の間で揺れていた。内定をもらえず地元に帰るわけにはいかなかった。

今冷静になって考えると、東京に固執する必要はなかったし、そういった負い目やプレッシャーを感じる必要は全くなかったと思う。周りと自分を比べても何もいいことはない。学校や会社で出会う人たちは、他人と比較してではなく、お互いがどういう人間なのか、どんな考えを持っているかを知りたいのだから。

面接に参加してくれる学生さんたちの中にもいろんなストーリーを持った人達がいる。面接に入ると、みんな背筋をピンと伸ばし、不安と期待が混ざった笑顔で挨拶をしてくれる。
「こんにちは!〇〇大からまいりました。〇〇です!本日はよろしくお願いいたします!」
私は震える声から緊張が伝わってくるのをグッと抑えて、質問を問いかける。
「学生時代のご活動、勉強されたことについてお話しいただけますか?」
「弊社を志望いただいた理由を教えてください」

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話してくれたことが全て本当かは分からない。ただ面接する側になって知ったことは、面接はお互いを知るマッチングの場なんだなということ。企業はスペックや言動が気に入らなかったから不採用通知を送っているわけではなく、その企業とのマッチングがうまくいかなかった結果、お祈りメールという形で通知をしていることがほとんどだ。

だから就活中の学生さんたちには、自分の話を一生懸命聞いてくれて、自分を必要としてくれる会社とぜひご縁が繋がってほしいなと思う。