「お酒強いの?」
これはあくまで体感だが、この問いかけに対して、7割程度が「強くはない」または「弱い」と返答する。しかし、お酒を飲める年齢になってから5年弱で得た私の教訓は、その返答は全く当てにならないということだ。

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特に男性。生ビール2杯を飲める男性は、「弱い」の部類に侵入してこないでほしい。「俺もお酒に弱いんだよね」と同類アピールをしておきながら、いざ居酒屋に行くと初手でビールを頼み、カクテル1杯目で赤くなる女に対して「えっ、弱すぎない?」とからかうことで距離を詰める流れは、成人男性に備え付けられたテンプレートなのだろうか。

かと言って、1口飲んだだけでダウンしてしまうアルコールアレルギーの人も、1口以上は飲んでも平気な私が言う「お酒に弱い」に対して「豚のくせに喋るな。ハゲ野郎が」と思っているに違いない。(言いすぎでは?)

強いと弱いの基準は、人によって全く異なる。したがって、この「お酒強い?弱い?」の質問は、高頻度で聞かれる割にはほとんど意味を成していない。相手が飲めるかどうかを知るためには、どのくらいが許容量であるのかを具体的に示すのが正解なはずだ。

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そんな、特に有益にも無益にもならない結論を出してから幾日後。美容院でカラーをしてもらいながら、話の流れで美容師さんに「お酒強いんですか?」と聞かれた。つい、「よし来た」と感じてしまった。は、模範解答を示すつもりで己の酒の許容量を説明した。

「ん~……人によって強いや弱いの基準はそれぞれだと思うんですが、自分としては弱い方だと思ってます。カクテル1杯でキツくなりますね。この前仕事終わりに同僚と飲み会をして、ほろよいを1缶だけ飲んだんですよ。それだけで限界が来ちゃって、帰りの電車で頭のクラクラに加えて胸のあたりのムカムカも生じてきたんですね。『あっ、コレまずいやつだ』って思って最寄り駅の一駅前で降りたんですけど、間に合わなくて。地面に膝をつきながら、ホームで戻しちゃいました。もう、おえ~っ、とね。手で受け止めようとしたんですが無理でしたね。着ていたジャケットとYシャツをゲボまみれにしながら改札階まで階段で降りて、駅員さんに事情を話して謝りました。『気を付けて帰ってくださいね』と優しく対応してくださったので、まぁ、慣れていらっしゃるんでしょうね。でも気をつけようと思いました。まぁ、なんで、ほろよい1缶で吐くくらいの弱さですね。」
「へ、へぇ~」

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この時、わたしとお酒との距離感を伝えることには成功したと思う。自身の許容量を具体的な例を伴って伝えられたし、「酒に強いか弱いか、の基準は人それぞれだから、具体的な回答がなければその質問は意味をなさない」というメッセージも込められた。ただ、思いを届けたのはいいが、返ってきたのは見たことないような苦笑いだった。次は、話し相手との距離感を見定めることに注力したい。