私は今の仕事がわりと好きだ。向いているかはわからないが、仕事に対して「嫌」以外の感情をもったのは初めてかもしれない。もしかしたら向いているということなのかも。

私はもともと教師をしていた。小さいころからの憧れで、幼稚園のときは幼稚園の先生に憧れて、先生と同じ服を買ってくれと親にせがんだ。小学生のときは小学校の先生が黒板を書く姿に憧れて休み時間に黒板に字を書いて楽しんだ。成長するにつれて色々な職業を知り、「こんな仕事もありかもな」と思うこともあったが、結局進路選択では教師の道を選んだ。子どもが好きで勉強が好きで教えるのが好きな私には天職だと思っていた。

しかし「向いているだろう」と思っていた教師の仕事は、開始3日で「完全に向いていない」に変わった。正直、忙しすぎて子どもとまともに向き合う余裕がない。忙しすぎるのでどんな授業をするかを考える余裕もない。思っていた教師と現実の教師は全く違った。

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3年勤めて教師を辞めた。そこからなんだかんだあって、今はなぜか週2勤務の事務員をしている。デスクワーク、電話対応、他の職員との連携、雑務……私に向いていないことばかりじゃないか!と思った。いつ電話が鳴るかわからない、いつ人が訪ねてくるかもわからない状況の中で、お金の計算や職員の仕事の調整を行う。やっぱり苦手。しかし、信頼している方からのお声がけということもありやってみると、これがなんと楽しい。

もちろん楽しいことばかりではないし、理不尽なことや納得いかないことも日々起こる。でも楽しい。きっと周りの人に恵まれているのだろう。仕事って、内容や環境も大事だけど、結局「人」なんだよなぁと思い知った。

はじめて働いた場所が究極に忙しかったからか、仕事中にぼーっとする時間があるのが落ち着かなかった。これでいいのか。自分にできる仕事が転がっていないか無意識に探して動いていると、同僚から「それはワーカホリックです!」と言われた。「働き過ぎです!」「絶対に休憩は時間通りにとってください!」と釘を刺され、「あ、また働こうとしてる!ストップ!」と、働きすぎだと怒られる始末。なんて職場だ。最高過ぎないか。

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今の仕事は、正直全然稼げない。生活するのが精一杯、というか節約のために安い鶏むね肉ばかり食べて「そろそろ鶏もも肉も食べたいな」と思うくらい。服を買うなどもってのほか、1000円以下の安い化粧品ですら躊躇する。
教師をしていたときは、忙しすぎて使う暇もなく有り余るお金で病院に行ったりマッサージに行ったりしていた。

どちらが幸せか。迷う余地はない。今が幸せだ。

好きなことを仕事にする、といっても、その形はさまざま。好きなことを仕事にしなくてもいいと思う。働く中で苦手だと思っていたことが意外とそうでもなかったり、やっていく中で上手くなったりもするだろう。「新卒で入った会社で定年まで働く」という当たり前だったことは今もうない。安定は減ったかもしれないが、自由が広がったともいえる。私自身もこれからどうしていこうかぼんやりしている今の状態がわりと好きだし、今の環境に閉じ込められている人がいたら、外の世界も案外悪くないことを伝えたいと思う。