選挙落ちたのに明るすぎ!「26歳・女性・無所属無名」敗戦の弁 きっかけは?ぶっちゃけいくらかかった?
12月24日に投開票された武蔵野市議補選(被選挙数2)に無所属で挑んだ26歳の鈴木なりささん。9527票を獲得するも、惜しくも落選(4位)となりましたが、選挙後に話を聞くと「すっっっっごく楽しかった!」というリアクションが返ってきました。いったい何が楽しかったのか。ぶっちゃけお金はいくらかかったのか、そもそもなんで立候補を? 明るすぎる敗戦の弁を聞きました。
12月24日に投開票された武蔵野市議補選(被選挙数2)に無所属で挑んだ26歳の鈴木なりささん。9527票を獲得するも、惜しくも落選(4位)となりましたが、選挙後に話を聞くと「すっっっっごく楽しかった!」というリアクションが返ってきました。いったい何が楽しかったのか。ぶっちゃけお金はいくらかかったのか、そもそもなんで立候補を? 明るすぎる敗戦の弁を聞きました。
1997年9月生まれの26歳。ICU(国際基督教大学)在学中に、地域密着喫茶店「喫茶おおねこ」を開業し、ひとり店主に。2021年3月に同大学卒業。2023年4月の統一地方選で友人で現武蔵野市議の酒向萌実(さこう・もみ)さんの選挙応援を経験し、2023年11月に政治活動を開始。
――なぜ、立候補することになったのでしょうか?
友人のもみちゃん(現武蔵野市議の酒向萌実さん)の選挙戦をお手伝いしたのが、始まりでした。もみちゃんが、「選挙にでるんだけど手伝ってくれない?」って声をかけてくれて。たまたま大学は同じだったけど、全くの初対面だったので、なぜ私に声をかけてくれたんだ?と不思議でした。あとで聞いたら「平日動ける自営業で、地域密着の若者、できれば女性を探していたら、なりさがドンピシャだったから」だそうです。
声をかけられた時、「誰が他にお手伝いするんですか?」と聞くと「私ひとり!」って言うんです。選挙ってたくさんお金や人脈を使ってやるものだと思ったのに、この人、ひとりでやろうとしてる!変な人!面白い!と思って、お手伝いすることにしました。
最初はそこまでがっつりやるつもりはなかったんですけど、やればやるほど面白くて。バイトも休んで、フルで選挙応援をすることにしたんです。
――バイトを休んでまで!何がそんなに楽しかったのでしょう?
選挙応援のコミュニティがめちゃめちゃ居心地がよかったんです。大学を卒業して、普通に暮らしていると、社会問題や政治について話せる人に会わなくなった。それが私にとってはちょっとストレスだったんだと思います。
選挙応援のコミュニティだと、普通にそういう話ができるんです。ちょうど入管問題(名古屋出入国在留管理局で2021年にスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんが亡くなった問題)が表に出てきた時だったんですが、「選挙ボランティア終わったら、デモ行こうよ!」ってみんなで出かけたりしていました。
ほかにも、セクハラ被害にあってるメンバーの相談にのった際に「やっぱりこれはおかしいんですよね?セクハラって言っていいんだって思えた」と言っている子もいました。「私は悪くない、社会がおかしい」と声に出して言えることがすごくうれしかったし、居心地がよかったんです。
そして、政治が身近になったおかげで、意思決定する場所に代弁者がいないと変わらないんだろうなとも思ったんです。いつかは自分もという思いもお手伝いするなかで芽生え始めました。もみちゃんが私のちょうど4つ上の29歳。次の統一地方選にもし私がでるならこんな感じか~ともみちゃんと自分の未来を重ねていました。
実際はもみちゃんの選挙戦を終えたのが4月23日。7カ月後の11月20日には駅前で演説しているんですから、人生って何がおこるかわからないです。
――なりささんと、もみさんの関係も素敵ですよね。
実は「若い女性」と同じカテゴリになっちゃうから、つぶしあうんじゃない?という心配もよくされました。でもそれってめちゃめちゃ解像度低いというか、想像力の欠如だと思うんです。
スタートアップでごりごりビジネスしてきたもみちゃんと、地域に根ざした個人事業主をしてきた私ではバックボーンも全然違う。20代女性が政治家になるサンプルをもっと増やしていきたいなと思います。
――もし「20代女性」がつぶしあってるなら、「70代男性」なんて超激戦ですしね。ところでぶっちゃけ選挙戦ってどのくらいお金かかったんですか?
結論から言うと持ち出しは30万円ほどでした。26歳の自分には非常に痛い出費ではあるのですが、たった30万円で、こんな貴重な経験ができたと思うと立候補してよかったなと思います。1万人近くの方に自分を信じて、名前を書いていただける機会なんてそうないですしね。
選挙戦が始まってしまえば、ありがたいことにだいたいの額を公費でまかなえるのですが、告示日までは自己負担なんです。無名無所属なので、二連のポスターを作るのに数万円をかけ、選挙カーをデザインしていただいてお借りするのに20万円ほど。選挙後は返金されるけれど供託金30万円。だいたい現金で60万円くらいないと選挙を始められないなあと思いました。
選挙戦を終えて、「地盤・看板・カバン」が必要というのはこういうことか、そりゃ若者が立候補するのはハードル高いよなと思うこともありました。選挙と仕事の両立はほぼほぼ無理なので、そうなると会社員の方が立候補するのは難しい。選挙説明会も平日の昼間にあるし、会社員を想定していないんだろうなと思ったりしました。私は個人事業主とアルバイトだったのでなんとかなりましたが……。
でも、その高いハードルを越えて立候補してみたら、とにかく楽しかった。この経験を伝えて20代の候補者を増やしていきたいですね。
1枚目のポスターは自分の手で貼った。他はすべてボランティアの皆さんが自転車を漕いで各地へ貼りに出てくれた=本人提供
テーマカラーのオレンジで。当初はこちらをポスターに使う予定だった=青木智子撮影
まだ短い前髪が邪魔でカチューシャをしながら街頭演説をしました=本人提供
立候補前、前髪がある時の鈴木なりささん。「幼く見えるので、選挙運動の時は前髪なしにしました」=本人提供
おさえで撮ったキリッと大人バージョン、こちらをポスターに使うことになった=青木智子撮影
車もないので、移動はバスと電車と徒歩!ガラガラにスピーカーをくくりつけて移動=本人提供
街頭演説の様子=本人提供
「落選は次へのステップだけどさすがに悔し泣きしました」。翌朝、腫れた目で吉祥寺駅に立ち、お礼を伝えた=本人提供
政治活動は紙の書類やパソコンや一日分の水筒を持ち歩くので荷物が大量なのを知っていたため大容量リュックを購入=本人提供
新たにスーツを買う余裕はなく、母にスーツを送ってもらい試着=本人提供
一緒に戦ってきたさこうもみ・武蔵野市議(右)と期日前投票へ=本人提供
「気候危機対策の必要性を訴えながら選挙カーを出すことに葛藤。でも、無所属無名を乗り越えるため、選挙カーを出すことを決めた。決めたのが直前すぎて由比ヶ浜から車をお借りした」=本人提供
初めての街頭演説は、吉祥寺駅サンロード前からスタート!たくさんの仲間が駆けつけてくれた=本人提供
納得のいく最終的なキャッチフレーズが決まったのは、12/7。告示日10日前だった=本人提供
=本人提供
=本人提供
かがみよかがみは「私は変わらない、社会を変える」をコンセプトにしたエッセイ投稿メディアです。
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