私は直感で恋をします。私が中学3年生の時、個別指導塾の大学生の先生を好きになった時でした。「あーよくあるやつね」って感じのやつです。よくある、けれどすごく素敵な思い出です。

れは、中学3年生の冬のことでした

◎          ◎

私は新しく塾に入ったばかりの時期で担当の先生を決めないといけないので、私は色々な先生のお試し授業を受けていた。Kは人気の先生で、なかなか授業を受けられず、希望した日から2週間くらい経ったある日、Kの生徒の欠席が出て急遽自習室にいた私が授業を受けられることになった。

個別指導といっても生徒2人対先生1人の授業体制の塾で、生徒を両端に、先生を挟むという配置で席は並んでいる。塾はワンフロアのみで、立ちあがれば全体が見渡せるくらいの高さの囲いで仕切られる小さなブースで授業は行われていた。

その日は1番奥のブースでの授業だった。奥のブースに着くと、Kが前の授業の片付けをしていて私の気配を感じたらしく、びっくりしてバッッッとこちらを振り返った。

その時、私は「直感」を憶えた。

こちらを振り返ったKの顔というか、その場の空気感を私は一生忘れないと思う。少しびっくりしたような顔をしてこちらを見ているKの顔の周りに、ちいさなシャボン玉のようなものが浮かんでいて、淡い黄色や青や黄緑色にチロチロと輝いていた。記憶の中のその場面は時間がゆったりと流れていて、本当に綺麗で、何度思い出しても うっとりしてしまう。

その時に私は、「あぁ、きっと私は恋をするのだろう」と思った。

何も話してない、何も知らない、この人がどんな価値観でどんな人生を生きているのか、名前すらも怪しい、本当になにも知らない時、ただ目が合っただけ。互いの事を認識しただけ。それだけだったけれど、その時の私にはそれが全てにも感じられた。ああ、好きになるって感じた。

◎          ◎

そんな漫画みたいなことあるか(笑)、夢見すぎ、と馬鹿にされるのだろうと分かっているので、あまり人に話した事はないけれど、私の今までの人生において1番強く「直感」を感じた出来事です。

結局その後2年程Kに恋をして、勝手に妄想したり、感傷に浸ってみたり、1人で散々片思いというものを楽しんで、受験期に入る時期に他の塾に移るため塾を辞めました。告白とかそういう類のものはしていません。

◎          ◎

今でもその時期によく聞いていた音楽が流れたりその塾の看板を目にしたりすると、Kのことを思い出して感傷に浸ってみたりしています。楽しかったなぁって、好きだったなぁって、今になってそうやって思い出す時間もとても好きな時間です。

恋を実らせるという意味ではこの恋は成功していないけれど、片思いというものを心から楽しむことができました。そういう意味では私にとって直感によって導かれた、本当に良い経験になっています。その直感に従って恋をしたあの時の経験は今でも宝物です。そしてこれからもずっと大切にする思い出です。

直感を信じて本当に良かったです。