「私の視界を広げたもの」を一言でいうと、「男の子の存在」である。とても聞こえ方が悪いが、私は中高を女子校で過ごし、大学生である今も女子大という、周りに異性がいないという環境で過ごしてきた。しかし、大学でバイトを始めたり、サークルに入ったりして、一気に男の子と関わる機会が増えた。自分も周りも男の子と関わる機会がなかった私がしてきたこれまでの恋愛話と言えば、理想や妄想ばかりだったのが、上京して周りの恋愛話もよく聞くようになってからは、「この人と付き合いたい」とか「彼女に振られた」など現実的な話題が多くなり、「本当の恋バナ」というものを経験した。それは私が高校時代までに思い描いていた「恋愛」とはかなり違うものだった。もちろん悪い意味で。

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ある女友達(Aちゃん)は、同じ部活の、彼女がいる男の子にご飯や映画に誘われ、好きになってしまったけれど、部活内で噂になってしまい自然消滅してしまった。そうなるまでの話をよく聞いていたが、Aちゃんは彼に彼女がいるということを理解しつつ、ご飯や映画に一緒に行ってくれる彼に惹かれ、そのエピソードをとても楽しそうに話していた。優しくしてくれていても、彼女と別れ自分と付き合うという選択を取らない彼にもどかしさを感じていたり、部活内で噂になってしまったことで落ち込んでしまったりしていた。

さらに、サークルで友達になった男の子(Bくん)は、付き合っていた彼女に、「恋愛することが苦手だから別れたい」と言われ、とてもショックを受けていた。Bくんは、自分のことが嫌いになったわけでもないし、彼女が浮気をしていたからという理由でもないから、相手を責められないのも辛い、と言っていた。それを聞いて、そんな理由で別れを切り出されることもあるのかと驚いてしまった。

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実は私自身も、Aちゃんと同じような経験があり、話を聞いているとき、まるで自分の過去の話を聞いているような気分になっていた。

私は大学2年になったばかりの時に、一緒にご飯に行こうという流れになった男の子がいた。このような経験は初めてだったので、とても嬉しく、たくさんお話をしてくれたのもあり、いつの間にか好きになっていた。

しかし突然話の中で「彼女がそこで待ってて……」という言葉が聞こえてきた。さすがに聞き間違いだろうと思ったがそんなことはなかった。少し後に「彼女いるって言ってたけど大丈夫なの?」と聞いて「大丈夫だよ」と返された。何が大丈夫なんだろうか。その時一緒に食べていたピザは味がしなかったし、言われてから数分間はちゃんと会話が出来ていたかすらも怪しい。「頭が真っ白になるってこういうことなんだ」と思った。

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ただ今振り返って一番怖いのは、彼女がいると分かっていてもまだ好きだったことである。彼は罪悪感がなさそうに次のデートの予定を決めてくるし、私もそれに乗っかって「うん!」と返事をしていた。本当に罪深い男だったと思う。でもこの一件があってから、気になる子がいたとしても「きっとこの人には彼女がいる」と思うようにし、変に期待しなくなったという意味では、必要な経験だったのかもしれない(と思うようにしている)。

ここまでの話は全て2年弱の間で経験しており、私が高校の時に友達と話していた「恋バナ」の中の妄想は儚く散ってしまった。でもそのような話を聞くたびにそれぞれがいろいろな悩みを持っていて、中高で女子としか関わらず、また地元から上京してきた私にとっては恋愛話のすべてが刺激的だったのである。私が今まで聞いてきた話と経験したことを考えると、やはり恋愛というのは想像していたよりもきらきらしたものではないと実感している。