私のおまもりは、自分が所有する複数の銀行口座と証券口座の残高に現れる数字だ。
一見ロマンのかけらもないが、そこには私の数年間の資産形成の歴史とその結果が詰まっている。
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私は、就職する少し前からこれまでの数年間、資産形成を意識して行動を取ってきた。貯蓄だけでなく、株式を中心とした資産に投資もしている。同年代でこのようなことをする人(していた人)は少数派だと思うが、私が資産形成を意識したきっかけは、学生時代に毒親のモラハラに悩まされ続けていたことが大きいと思う。「自由に使えるお金がもっとあれば、毒親の元からさっさと去ることができるのに」という悔しい思いで悶々としていた。わずかな足しになるだけとわかっていても、他にやるべきことを犠牲にしてアルバイトの時間を捻出していた。やっと一人暮らしができたらできたで、出費は増え、常に預金残高の不安はつきまとった。お金がないことによる機会損失を痛感した後に続けて、お金を失う恐怖心が私の中に刻み込まれた。
就職してからはお金のやりくりの心配はぐっと減ったものの、安定した仕事を持っていても、何が起こるかがわからないのが人生だ。会社都合で退職せざるを得ない状況も今後ないとは言い切れないし、私の身に何かあって働けなくなる可能性も否定できない。就職と同時に実家と縁を切った私には、いざという時経済的に頼れる親族もいない。私たちの世代は、将来もらえる年金もほとんど期待できない。自分の身を守れるのは、自分と、自分が築き上げてきた資産だけなのだと思う。
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言うだけなら簡単だが、ここ数年間で、貯蓄をすることの難易度が上がったし、今後も上がるだろうと言われている。昔より物価は上がっているのに、給料の手取りはなかなか上がらないのは実際多くの労働者が実感していることだろう。一朝一夕ではどうにもならないことだからこそ、意識して長期的に取り組む必要がある。
毎月一回、口座残高記録デーを設定して、各口座の残高をスプレッドシートに記録していく。たまに前月比マイナスになることもあるが、長い目で見て少しずつでも右肩上がりに増えていく口座残高は、日々の生活(主に労働)のモチベーションになる。冷静に考えれば、口座残高なんてただの「現世で受けられるモノやサービスの引換券」の数字に過ぎないのに、数字の増加と共に安心感も増加したような気になれるのが人情である。
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人間は生きている限り、お金と切っても切れない関係にある。お金があれば必ずしも幸せになれるわけではないが、お金があることで間違いなく選択肢は増えるし、不幸を避けることも可能になる。ただ、結局のところ「何円持っているから安心」ということがない終わりなき旅路だし、追い求めれば追い求めるほど自分を苦しめてしまうこともある諸刃の剣である。
「おまもり」が人生の目的となっては本末転倒であるのは百も承知だ。だから、そうならないようには気をつけながらも、社会情勢の向かい風を肌で感じながらも、私は生涯をかけてこのおまもりを強固なものにしていく。
人生に「絶対」はないし、それは資産運用を何年か続けていても思うこと。でも、誰かの金言や神社で売っている小物も結構だけれど、自分がピンチに陥ったときに現実的に自分を守ってくれる可能性が高いのは、やはり自分の資産なのだと思う。
長期間かけて守り、守られ、ほど良い距離感で自分の資産と歩んでいきたい。