幼いころから、私は何をするにも人任せで、誰かが決めたことに対して「いいよ」とだけ言って相手についていくことが多かった。幼少期は気の強い姉の後ろを追いかけ、学校や部活動ではリーダー的ポジションを避けつつ、しっかり者の友達に囲まれて過ごす日々。

そんな周囲に甘えてばかりだった私に転機が訪れたのは、一昨年の年末に行った1人旅である。当時の私は大河ドラマ「鎌倉殿の13人」にハマり、毎週リアルタイムでチェックするのはもちろん、ファンアートや考察を見漁るほど大好きだった。そのため、どうしても鎌倉にある「大河資料館」に行きたかったのだが、なんせ周りは学生ばかり、大河ドラマにこれほどハマっている人がいなかったのである。

そこで、「それなら1人で行けばいい」と思い、鎌倉へ1人で日帰り旅行をすることにした。

しかし、これまで人任せにしてきたことが災いし、たった1日の旅行の計画を立てるだけでも大変だった。

まず、私は千葉県に住んでおり、鎌倉へは2時間程かかる。冬は日が暮れるのが早いうえに夜は冷え込むため、真っ暗にならないうちに帰路につこうと考えた。一方、鎌倉にはドラマに登場する人物たちにゆかりのある場所が数多く存在し、1日ですべてまわりきることは不可能であったため、どこをどの順番でまわるかを考える必要があった。

ちょうど鎌倉から電車で1本のところに、江ノ島と海を一望できる有名な駅があったため、「日没ピッタリの時刻にその駅に着く」ことをこの旅の目標とした。また、大河資料館はチケット制で、入場できる時間が指定されていたため、これらをふまえたうえでなるべく多くの場所を巡るには、分刻みでスケジュールを考えなければならず、とても大変だった。

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そして当日。寝坊もせず、時刻通りの電車に乗り、途中までは順調だった。しかし、そこからさまざまなハプニングが起こったのである。

まず、主人公北条義時の自宅だったと言われる、覚園寺に行く際、道に迷ってしまったのだ。覚園寺は山奥にあり、かなり道が複雑だったうえ、元々私は方向音痴で、地図を見ても理解できないタイプだったことがここにきて仇となったのだ。

自力で歩いてもたどり着けないと判断した私は、近くにあった雑貨屋に入り、店員さんに道を聞くことにした。人見知りな私にとってとても勇気がいることだったが、店員さんは丁寧に道を教えてくださった。おかげで時間通りなんとか目的地にたどり着くことができたのである。知らない人に話しかけることはハードルが高いが、「困ったときは1人で抱えずに誰かに聞くことも大事」だと思えた瞬間だった。

次に、大河資料館は鶴岡八幡宮の敷地内にあったため、時間まで境内を散策していた。しかし、当時の私は派手なピンク色の髪色をしていたせいか、何故か外国人観光客の集団に話しかけられたのである。相手は英語で話しかけてくるため、自分ももちろん英語で返さなければならない。

私は英語が得意というわけではなく話しかけられた時は困ったが、人生は一期一会である、彼らと会話してみることにした。すると、話してみると彼らはみなフレンドリーで、自分も1人で旅をしてきた寂しさもあったためか、とても話が弾んで楽しかった。

資料館の入場時間ギリギリになるほどで焦ったが、英語を話せるようになれば、様々な国籍の人たちと仲良くなれる最高の方法であると身をもって実感した。

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その後は順調に巡ることができ、目標であった「日没ピッタリの時刻に海の見える駅に着く」ことも達成した。その日の夕日は今までで見た夕日の中で一番きれいだった。

それはおそらく、自ら計画した旅が、現地で出会った様々な景色や人々に彩られ、無事に達成されたからであろう。

この経験は私にとって、「自分でなにかをやり遂げること」や「困ったときはまわりを頼ること」「英語の大切さ」を学んだ、忘れられない経験になった。