初めて「あなた」と出会ったのは、大学3年生の頃でした。
私は大学の授業のお手伝いバイトをしていて、あなたはその授業の受講生で。
神のお導きなのか、悪魔の嫌な小突きなのか。1学年上のあなたは、私の就職志望先の内定を持っていて、私と同じ格闘技をしていたから話がとっても合った。

その頃「2歳下の彼女がいるんだ」というのは聞いていたのに、好きな映画があるから一緒にみようってネカフェに一緒に行った。ネカフェの暗い照明の下、初めてのキスをしたね。
女子校上がりで男性経験なんてからきしなかった私だったから、あっという間に舞い上がっちゃった。
そこからは「光陰矢の如し」とは言ったもので、あなたが卒業するまでの4ヶ月、ドライブに連れて行ってもらったり、実家に呼んでくれたり、就活の面接対策を一緒にしてくれたりした。「彼女と別れないの?」「別れないよ」と押し問答した末に無言でキスを交わしたことも何回もあったな。
結局、あなたが私を選ぶこともなく、その彼女と付き合ったままあなたは就職して九州に行ってしまった。残された私が志望した企業に入れなかったのは、きっとコロナのせいだと思うんだ。ズタズタになった心のせいなんかじゃなくて。

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それから、1年。
馬鹿な私は、まだ「恋の炎」とやらに取り憑かれていた私は、「彼女は今はいないらしいよ」という共通の友達の話を真に受けて連絡をとってしまった。
あなたも、遠方での激務と孤独に疲れていたんだろうな。連絡を取り続けるうちに、「付き合ってほしい」って私に言うようになったね。
就活も終えた私が、関東から九州へ月に1、2回飛行機で飛ぶ日々が始まった。
そう、私だけ。あなたが私に会いに来てくれたことなんてあったっけ?友達にもたくさん止められていたけど、何故だか自分を抑えきれなかった。

でも、たくさんのことを教えてくれたね。
免許を取りたてだった私に、何度も運転のやり方を教えてくれた。私の運転技術はあなただけが教えてくれたもの。仕事で疲れて帰ってくるあなたのために、料理のスキルだって磨いた。社会人のノウハウだって、たくさん伝えてくれた。
でも、次の年、私が社会人で忙しくなって構えなくなったら、あっさり振られちゃった。
知ってるよ、その時現地に彼女が出来てたものね。

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今、私の隣には優しくてあったかい旦那さんがいます。
私が運転したら褒めてくれて、作ったご飯も毎日美味しい美味しいと食べてくれます。私のことを大事にしてくれて、傷つけることなんて絶対にしない大好きな人。
私も、もう無謀に身を投げ打つようなこともしないで、ある程度打算的に生きることができるようになりました。自分を大切にすることを知って、温かい家庭を築く希望に胸を膨らませた、可愛い幸せな「奥さん」なのです。

あなたも、関東に戻って婚約したって聞きました。
私と同時進行していたその彼女さんと。どこかでバッタリ、なんて想像したくもないなぁ。
私が憧れてた仕事から転職もしたみたいで、もう、私の追いかけていたあなたではなくなっちゃったね。
あなたのことは、絶対絶対許しません。
でもあなたがいなかったら、燃えるような感情も、恋に苦しんだ日々も、そして今の穏やかで愛しい気持ちも知ることはなかったでしょう。そのことだけには、感謝してあげても良いかな。あなたとの2年間は私にはかけがえのないものだったんだね。

だから、お願い。
あなたも幸せになってね。