「ずっと忘れない」。そう言ってくれた彼からブロックされている。
私は苦しい思春期を過ごしていた。なんとも生きづらい性格で、繊細で。自傷行為を繰り返しながら現実逃避していかないと、今日という1日すら乗り越えられない。
そんな時代に出会った彼も同じ、不器用に生きる人。今から15年前の話だ。
出会いは中学1年生の頃。出会った当時は私も彼も不登校だった。学校での集団行動に嫌気がさし、家族とも不仲。似たような境遇と性格で、仲良くなるまで時間はかからなかった。インターネット上の友達だったが、毎日連絡を取り合っていたので、なんだか近くに寄り添ってくれているようだった。
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当時からお互いに恋人がいた。しかし不器用な性格のせいで、恋人にすら自分の弱い部分を見せられなかった。だが「死にたい」「逃げたい」といった弱音も、私達2人の間だけでは吐き出せた。彼とは顔が見えなかった分、どんな自分もさらけ出せた。それは彼も同じ。
鏡のように同じことを考える彼は、まさに「もう1人の自分」だった。弱音を吐きながら、なんとか思春期は耐え続けた。
定期的に連絡を取り合い10年が経ち、お互いに22歳を迎えたとき、私は離婚を経験した。そのあと彼から告白され、付き合うことになった。あのときは複雑ながらも心が舞い上がり、毎日が宝石のようにキラキラ輝いていたと思う。
恋人になったが、遠距離。お互いに大切な人だから、それでもいい。今まで通り、連絡をこまめに取り合えばいい。そう軽く考えていた。でも現実は厳しかった。
頑張っても月に1回会うことが限界。大人になった今としてはそれでも十分なのだが、当時の私達はまだ若かった。不器用なまま成長した私達は、すれ違う日々が続いた。それでも彼が好きだったし、お互いがなくてはならない存在だった。
「もう、いなくならないで」。それが合言葉だった。
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10年も付き合いがあり、恋人になっても1年が経ったが、別れは突然訪れた。あるときコロナという疾病が流行し、外出を控えなくてはいけない状況となった。会いたい、けど会えない。新幹線に乗って会いに行くことも諦めざるを得なかった。
喧嘩ばかりが増えていき、「こんなはずじゃない」と胸がギュッと苦しくなっていった。
ある日の言い合いで、私が「じゃあ結婚するか別れるかどっちかえらんでよ!」と泣いた結果、彼は別れを選択した。10年以上かけた大恋愛が、私の一言で砂のように散り、呆気なく終わってしまった。
別れて2年が経った頃、お互いが新しくできた恋人と同棲することになった。報告したとき、2人で「良い関係を築ける相手が見つかって良かったね」と笑い合った。あのときの笑いは今までで1番軽やかで、スッキリしていたかもしれない。
「これからもさ、1番の理解者だしずっと忘れないよ」そう言って会話が終わった。
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彼からブロックされている。
最近、彼の誕生日にLINEしてみた。他愛もない「お誕生日おめでとう」。けれど何日待っても返事はこなかった。悔しいとか裏切られたとか、ネガティブな感情じゃなくて、「ああ、良かった」と心からあふれてきた言葉。
この大恋愛は、本当に終わったんだ。不器用な私達が、ようやく大人になって次に進めるんだ。
私には今、婚約者がいる。婚約者は過去の私をすべて受け入れてくれ、私のことを愛してくれている。弱い自分もさらけ出せる相手がいて、笑い合えて。毎日がとても愛おしく、幸せだ。
彼は今、どうしているかわからない。もしかしたら結婚しているのかもしれないし、私のことを忘れて元気にしているのかもしれない。けど、そうだとしたら嬉しい。そうじゃなくても生きていてくれるならそれでいい。私はあの苦しく支え合った大切な時間を、ずっと忘れない。