見知らぬ誰かと話ができる。サイトを見つけてワクワクしたあの頃

これは、二度と会えないけれど、何処かで存在しているであろう貴方に送ります。
今では当たり前になったネットの世界。誰もが顔や本名を知られる事なくやり取りが出来るようになって何年が経ったのでしょうか。今でも使い続けるこの世界で、私が出会った一人の男性に伝えます。

貴方との出会いは一つのチャット。何処にでもあるような、何の変哲もないサイトでした。
今でもそのチャットはあるのでしょうが、その人と話す事が出来ない事は明白でした。そのチャットに二度と戻る事はないだろうと、それだけは確信しているからです。

当時、まだネットリテラシーを全く理解していなかった歳の私には、向こう側の人間が本当に存在している事すら非現実的。見知らぬ誰かとネット上で話が出来る。今では当たり前な事に驚きを隠せませんでした。
初めてそのサイトを見つけた時、心の底からワクワクしたのを覚えています。好奇心旺盛な私は、本当に興味本位でそのサイトをクリックしたのです。

初めて知ったネットの世界。顔も知らない貴方と何度も電話した

初めて知ったネットの世界は刺激的でした。同い年だと言う子達とチャットすること。現実で嫌な事ばかり起きている私にとって、救いの手を出されたようでした。
大嫌いな現実に目を向けたくなかった私は、いつの間にかこの世界にどっぷりとはまってしまっていました。来る日も来る日もチャットして、そして出会ったのが貴方でした。

きっかけは些細な事で、顔を向けあって話さないからなのか、人には言えない事を相談してましたね。今思うと、顔の知らない相手と電話をするなんて、我ながらなかなか危険な事をしたなぁと思います。

貴方と何度も通話した日々は今でも鮮明に覚えています。声しか知らない私の話をいつも聞いてくれましたね。毎日学校に行きたくないと、ネガティヴな発言ばかりする私に沢山の励ましを与えました。
貴方の言葉に、私がどれだけ励まされたことか。きっと、今の貴方は知らないのでしょうね。

生きる希望のカケラをくれた貴方のおかげで、とても幸せです

そして、あれから約9年が経ちました。もうとっくに成人して、立派とは言えませんが社会の一員として働いています。同い年と言っていた貴方も私と同じように働いているでしょうか?きっと、不器用ながらも素敵な人になっているでしょう。
そんな今の私は、どうしようもないあの時の私とは正反対の明るく信頼される人間になりました。

もちろん、時々あの時の私に戻ってしまうことはあるけれど。
それでも、こんな私を支えてくれる素敵な人に出会えました。あの時、生きる希望のカケラをくれた貴方のお陰で私は今、とっても幸せです。

日本の何処かで生きている、ただそれだけを信じて貴方との出会いを小説にまでしてしまいました。何歳になっても、何年経っても、きっと貴方の事を忘れる事はないです。大切な宝物を、他人には見えない、私にしか見えない宝箱に入れていますから。
そんな私が書いたこのエッセイを読んで、思い出してくれる日を信じています。

そして、最後に一言。
月を見る度に、貴方を思い出しています。