思い返せば、人生の分岐点は山ほどあった。
中学受験、大学受験、就職、結婚……。
どれか一つでも違う分岐点を選んでいれば、今この瞬間私はここにいなかっただろう。
そんな中、自分の人生に一番大きな影響を与えた分岐点は、就職だった。

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中学校三年生の時、担任の国語の先生に憧れ、漠然と将来教員になりたいと思った。
その後、多少の迷いはありつつも、やはり教員になりたいと思い、就活を開始。
自分が私学中高一貫校出身であったため、私学中高一貫校に絞って、何校かの試験を受けた。
選考日が重なり片方の学校の試験を辞退したり、不採用になったりしながら、なんとか一校に常勤講師として雇ってもらうことができた。

常勤講師というのは、専任講師(学校により名称は異なるが、他には専任教諭という呼び方もある)という雇用形態の教員と仕事内容は変わらない。
担任や副担任、校務分掌を持ち、授業数も多く持たなければならない。
違いとしては、専任講師は終身雇用であるのに対し、常勤講師は雇用期間が三年と決められていること。
地域にもよるが、私が住んでいた県の私学は、経営上の問題で、どの学校も常勤講師を専任講師にすることはほとんどなく、三年経てばまた就職活動をしなければならない。

これは稀なパターンだが、私が勤めていた私学は、常勤講師には部活と担任は持たせず、副担任や校務分掌のみ持たせるというルールがあった。
そのおかげで世間一般の教員よりは忙しくなかったものの、それでも授業の用意や副担任業務で忙しい日々。
もし三年後、別の私学学校や公立学校に再就職となり、担任や部活を持つことになれば、いよいよプライベートの時間はゼロになってしまう……。
絶対にそれだけは耐えられないと思った。

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というのも、教員になるというのは私にとって二番目の夢だったからだ。
一番の夢は、早く結婚して家庭を持つこと。
一般企業でもそうだと思うが、教員の世界でも、同じ職場の人と互いに惹かれあい恋愛関係になるというのは、さまざまな事情があり難しいこと。
結婚したいなら、別の場所で出会いを探さなければならない。

しかし一つ大きな問題がある。
このまま安定した雇用形態の職に就かないままで私自身は安心して暮らしていけるのか。
もちろん、さまざまな働き方が肯定されるべき現代において、非正規雇用で生きていくことは全く悪いことでもなんでもない。
しかし私の性格上、独身で非正規雇用という形態で生きていくことに強い不安を覚えていた。
教員から一般企業に転職するのはなかなか難しく、転職が成功するのは公務員や学校事務が多い。
公務員なら年齢制限があるし、学校事務にしても、若い方が有利に決まっている。
先に転職してから結婚するか、期間を決めて婚活をして、うまくいかなかったら転職に向けて動き出すか……。

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悩んだ末、私は期間を一年と決めて婚活をして、うまくいかなければ婚活は休んで転職に向けて動き出す決意をした。
早く結婚したかった私にとって、婚活を休んで年齢を重ねていけば、婚期を逃すのではないかという強い不安もあった。
しかし、結婚の可能性を最大限に広げ、何があっても安心して生きていくためには、期間を決めて婚活するより他ない。
決死の覚悟で私は道を決めた。

その結果、運良く、夫と巡り会い結婚することができた。
六月には子どもも生まれる。
あの時、先に婚活を優先するという道を選ばず、転職の道を選んでいたら、私は夫と巡り会い、結婚し、子供を授かることはなかった。
この道を選んで本当によかったと日々実感している。