広い海の前にバラで飾られたアーチ。幼いころからの夢を叶えた結婚式

神々の島で私と夫は結婚式を挙げた。
インドネシア、バリ島。時間が止まっているかのようにゆっくりと進む特別な場所。
日常を忘れて、ただゆっくり過ごした旅だった。

「海外の自然に囲まれた島で、こじんまりした結婚式を挙げたい」
私は小さいころから結婚への憧れがあった。

そんな結婚式が叶った場所。
広い海の目の前に真っ白なバラの花で飾られたアーチ。
太陽に照らされながら、たくさんのプルメリアの花でできたバージンロードを歩く。
そして両家の家族の前で、夫と二人三脚で何があっても支えあって生きていくと誓った。
夫が目を真っ赤にしていた。泣かないぞ、と決めていたのに、私もうるっとしてしまった。

結婚式が終わると近くにいた女の子が、「プリンセスみたい」と言って近づいてきてくれた。
プロポーズのとき「僕のプリンセスになってください」と言われたことを思い出す。
私は本当にプリンセスになったんだ。

子宝に恵まれるという言い伝えを聞き、まさかと思いながらも…

「バリ島で結婚すると、すぐに子宝に恵まれるんだよ」
そんなことを現地のスタッフから聞いた。すぐに赤ちゃんと一緒に戻ってきてね、と無邪気な笑顔で言われる。
私はその頃すでに「多嚢胞性卵巣症候群」による排卵障害と診断されていて、すぐに赤ちゃんが来てくれる状態ではないとお医者さんからは言われていた。
頭の中では少しもやもやするものを抱えながら、そんな現実じみたことは言えなかった。
「次は3人で来るよ」なんて、笑顔で返事をしてその場を凌いだ。

結婚式から帰ってからすぐに、夫婦ふたりでハネムーンに出かけていた。
旅から戻ってから、なんとなく気になった、あの「言い伝え」。
「まさかね」
そう思いながら薬局で妊娠検査薬を手に取る私がいた。
結果の欄は空欄になるだろうと想像して、できる限り自分の心が傷つかないようにしながら検査結果を待った。

まさかだった。
本当に妊娠していた。
全く想像していなかったものだから、ひとりで家の中を飛び跳ねた。

いつか、笑ってお礼参りができる日が来ることを切実に願って

翌日病院に行くと、お医者さんも驚いていた。
不妊治療が必要だと言っていたのに、まさかの双子を授かっていたのだから。
エコーを入念に見て、私もお医者さんも言葉が出なかった。

「あの言い伝えは本当だったんだね」と、妊娠がわかってから夫婦でよく話している。
バリ島から連れて帰ってきた、ガネーシャ(ゾウの頭をした幸運の神様)の置物の頭を撫でてお礼を言っていた。

「子どもたちが生まれたら、お礼参りにバリ島に行かなきゃね」
そう言っていたのに、まだ叶いそうにない。
子どもたちの誕生前にはコロナで自由に行き来することが難しい世界になってしまった。
バリ島の、あのゆったりした空気を感じられるのはどれくらい先になるのだろう。

この春、我が家には3人目が誕生する。
「次は3人で」と言っていたのに、もう家族が3人も増えることになる。
まだお礼参りもできていないのに。
神々の島で「あの言い伝えは本当だったよ」と言って笑える日が来ることを切実に願っている。
早く神様に子どもたちを見せに行かないと。