「スタッフの皆さんに保護者の私たちからプレゼントがあります」

これはきっとこの先も、かけがえのない思い出としてわたしの心に残り続けていくエピソードである。
昨年4月わたしは大学を卒業し、山村留学に携わる仕事に就いた。山村留学とは、都心部などから来た小中学生が、1年間地域の学校に通いながら共同生活を送るというものである。こどもたちの暮らしをサポートし、コーディネートしていくことがわたしの仕事だった。

4月にこどもたちと初めて顔を合わせ、こどもたちにとっても、わたしにとっても、ドキドキの1年間が幕を開けた。

「新卒1年目で何もできない上に、人生経験も浅い。こどもたちに何か伝えられることがあるのだろうか」「親にもなったことがないわたしには、こどもたちのために何ができるのだろうか」始まってすぐにわたしはそんな不安に苛まれた。

しかしいくら考えても、人生経験を積むことはできないし、母親になることもできない。不安はありながらも、目の前のこどもたちに向き合うしかない。こどもたちに歳が近いわたしだからこそ、できることがあるはずだと心に刻み、日々を過ごした。

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そして、ついに留学生たちが旅立つ3月。長かったようであっという間だった1年間が終わりを迎えた。最後の集大成、留学生の門出を祝して、解散式を開催した。

保護者の方、地域の人たち、学校の先生など実にたくさんの人たちが集まり、式はスタート。留学生たちの有志発表から始まり、1年間を振り返る思い出ムービーの上映。こどもたちの成長した姿に静かに感動するとともに、何気ない毎日がこんなにも眩しくて、かけがえのないもので、幸せな日々だったのかと実感。

一緒に過ごしてきた1年がついに終わってしまう、そんな寂しさで心はいっぱいに。そして、スタッフ・地域の方からの留学生へ送る言葉と式は進んで行く。

保護者の方から言葉をいただくタイミングで「スタッフの皆さんに保護者の私たちからプレゼントがあります」と一言。とある動画が上映された。事前に動画の流し方などの相談を受けており、保護者の方が動画を用意していたことは知っていた。しかし、それがまさかスタッフへのサプライズ動画だったなんて!嬉しい気持ちとびっくりした気持ちが入り混じりながら、1番前の席に座らせてもらい動画がスタート。

ドキドキしながら見ていると出てきた言葉は「みんながいてくれたから 今があります」。寂しい思いを抑えて、泣かないよう必死に堪えていた涙腺が完全に崩壊。動画にはこどもたちや保護者の皆様からの温かいメッセージが、懐かしい写真とともに綴られていた。

たくさんのことに合点がいった。解散式の前にわたしたちスタッフの写真を撮っていた方。スタッフの前でも何か隠れるように準備をしていた方。全部このためだったのかと、本当に感謝の気持ちが止まらない。

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そして盛大に泣きながら動画を見ていると、最後にはこの言葉が。

「大切な大切な娘を 愛してくれて 本当に本当に ありがとうございます。ずっとずっと離れても この先も、これからも、愛しています」

わたしはこどもたちに何ができるのだろうと悩みながらも、全力で向き合い愛し続けたこの1年。保護者の皆様はこどもたちだけでなく、わたしたちスタッフのことをもこんなにも見守り、愛してくれていたのか。

こどもたちと過ごした正解のない日々があたたかく肯定されたようだった。こどもたちの門出を祝う解散式。スタッフのわたしたちもが、こどもたちと過ごした1年の終わりにエールをもらい、祝っていただいたような気分である。

今年も4月から新しい留学生たちが来て、また1年がスタートした。来年の3月、満足して1年を終われるように。保護者の方からいただいた動画を宝物として、心の中に携えながら、こどもたちと正解のない日々をつくっていく。