政治家を目指す女性を支援する村上フレンツェル玲さん「まずは自分の父親を変える。その積み重ねが社会を変える」
日本で初めて女子大生が誕生してから111年が経ちましたが、今も、ジェンダーギャップ指数は世界156カ国中118位と世界的にも低いままです。特に113位と足を引っ張っているのが「政治分野」。そんな現状を打破しようと、政治家を志す女性を支援する「パブリックリーダー塾」を開塾したのが村上財団代表理事の村上フレンツェル玲さんです。村上世彰さんの娘として「まずは自分の父親を変える」という意識でいるという村上さん。なぜ、女性の社会進出にこだわるのか。8月21日の「女子大生の日」を前に、その本音に迫りました。
――たくさんある社会課題のなかで、なぜ政治分野に注力しようと思ったのでしょうか?
村上財団の代表理事を姉から継ぐことになり、色んな社会課題に向き合うなかで、女性の貧困の問題は、そもそもルールや法律、環境が変わらないと解決しないよなと思ったんです。でも、ルールをつくるところに、女性が少ない。そう考えると政治分野を強化していくことが一番の解決策になるんじゃないかと思ったんです。
区議会選挙の新人候補。女性の当選率は、男性の2倍以上
――女性の政治家を増やすことはできるのでしょうか?
ひとつ面白いデータがあるんです。
実は、区議会選挙の新人候補者だけを見ると女性の当選率は、男性の2倍以上。女性の方が当選しやすいんです。「どうせ出ても当選しないでしょ」と思ってしまっているかもしれませんが、そんなことない。立候補のハードルを下げていきたいなと思うんです。
――立候補するためには一度全てを手放さなきゃいけないわりに、当選の可能性が低い、大博打だなあと思っていたのですが、そうでもないんですね。それから、政治塾っていうと、どうしてもホモソーシャルの場が多いですよね。ジェンダー問題をやりたいと声に出しにくい気がします。
そうなんですよ。政治をやりたいと女性が思った時に、駆け込む場所がないですよね。なんでも話せる場所。ジェンダーの問題もざっくばらんに話せる場所。そうした場所になれたらいいなと思っています。
とはいえ「政治家」のハードルが高い…何ができる?
――「政治家になる」はまだちょっとハードルが高い、と思っている人は、社会を変えるために私たちができることはどんなことがありますかね?
私がよく言うのは、「自分のお父さんを説得して、彼の意見を変えてみてください」ということです。“日本の偉い人たち”の意見を変える……を一番身近に経験できるのはお父さんの意見を変えることなのかなって思うんです。
私の父親はもともと日本のジェンダー問題に詳しい方ではありませんでしたが、価値観がどんどん変わっているんだ、ということを伝えてきました。
親の世代に対して、色々思うことはあると思うのですが、それを諦めない。変えていくということが大事なのかなって思います。
政治家になりたい女性向け講義、なぜ日本ではなかった?
――話は戻りますが、パブリックリーダー塾ではどんなことを学べるのでしょうか?
主に三つ。①女性政治家になるためのステップ②リーダーシップについて③政策について
特に①については、選挙活動中のセクハラなど、女性政治家ならではの困難もあると思うので、経験者や支援している方から直接お話をきく機会をつくっています。
海外に目を向けると、政治家になりたい女性向けの講義というのはたくさんあります。特に、アメリカのハーバード大学での講義を参考にカリキュラムを組み立てました。
――海外では盛んなのに、なぜ今まで政治家志望の女性支援が、日本になかったのでしょうかね?
私たち以外にも女性政治家を産むための活動をされている方もいらっしゃると思うのですが、なかなか成果がわかりにくかったり、すぐに結果がでないからこそ、資金集めも難しいですよね。
――2年前にリーダー塾を開校して、手応えはどうですか?
1期目の希望者は約200人と想像以上に集まって驚きました。なぜ女性政治家が少ないのか?という議論では「そもそもなりたい女性が少ないよね」説があったのですが、それを否定する結果になったかなと思います。
1期生は4人が当選しました。2期生はこれから選挙に挑戦する方がいらっしゃいます。この数字をみるとひとまずのKPIは達成できていると言えるかなと。一番最悪なのは、誰にも知られず、人も集まらず終わってしまうこと。そういう意味ではメディアにも注目してもらえ、参加者も多く、とても良い結果を残せたので、今後も続けていく予定です。
「生活の中での違和感」を原点に立候補する女性たち
――参加される方は、どのような志望動機で政治家を目指されるのでしょうか?
自分の人生経験のなかで、女性としての生きにくさみたいなものを感じている方が多いように思います。例えば、ビジネスでご活躍されている方なら、女性としてキャリアを積むなかで、ガラスの天井を実感したと。そしてそれは、社会問題として解決するべきなんじゃないかと考えるようです。
または、出産育児を経験するなかで「こんなに男女不均衡だなんて知らなかった」としんどい思いをする人もいる。これまで、政治の分野で女性が活躍してこなかったので、足りていない部分ってたくさんありますよね。女性の生きづらさは、男性は当事者じゃないのでどうしてもわかりにくいのはある意味仕方のないことなのかなって思います。
「自分の生活の中でもった違和感」をきっかけに政治家を志す、というのがまさに政治家としてあるべき姿かなって思うんです。権威欲なんかではない、困ってることを変えたいという原点がある人にこそ、私は政治家になってもらいたい。
村上財団パブリックリーダー塾とは?
第3期は来年2月ごろから募集予定 詳細はHPでご確認ください