私が高校生の頃、「文系は就職に不利」なんて話を聞いたことがあった。受験に向けて文理選択をする際に、母からも「理系の方が就職に有利なんじゃない?」と言われた。私は「自分の好きなことを勉強したいから」と迷わず文系を選んだ。

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進学してからもその考えは変わらず、文系の学部で大好きなことを学び続けた。幼少期から特に好きだった英語。TOEICの点数も高い方。だから、自分は将来、英語を使う仕事に就くものだと信じていた。でも、現実はそう甘くなかった。企業からの大学差別や面接が苦手という理由から、気になっていた業界で面接に進めたのはたった1社。そこも2次面接で詰まり、最終面接には進めなかった。

就活で崖っぷちだった私は、ついに今まで避けてきた業界に手を出すことに。それは、IT業界。高校のときまで家にパソコンがなかったせいか、ブラインドタッチができない上にタイピングの速度も遅い。だから、IT系の仕事は無理だろうと勝手に思い込んでいた。苦手意識しかないけれど、そうも言っていられない状況だった。
「文系出身でIT未経験だった社員の割合が8割」という謳い文句に望みをかけ、ある企業の選考を受けることにした。

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苦手な面接も乗り越えて、無事に内定をゲット。私の就活は終わりを迎えた。大学を卒業して、IT業界でもマイナーな会社に就職した。職種はシステムエンジニア。会社の規模が大きくなく、英語メインの業務はもちろんない。ITに関する勉強をまったくしてこなかったので、資格の参考書を数ページ見るだけで頭が混乱した。さらに、研修期間中にいきなり現場への出向が決まり、気持ちがついていかなかった。「こんなんでやっていけるのかな」と不安しかなかった。

数年働いていると、色んな経験を積んでいくうちに、たくさんの知識やスキルが身に付いた。それに、理系の仕事ではあるけれど、文系の知識も結構役に立っている。例えば、システムに指令や命令を出したりする「コマンド」というものには、英単語を省略したものが多い。また、エラーメッセージも英文のため、私はすぐに意味が分かる。今まで学んできた英語を活かせて嬉しかった。また、メールや電話での言葉遣いが丁寧で、語彙力が高いと言われることがよくある。英語の次に好きな国語の授業や、ビジネスマナーの講義を真面目に受けてきてよかったと思う。

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なりたい職業には就けなかったけれど、とても充実しているので後悔はしていない。嫌々飛び込んだ業界だったけれど、仕事が楽しいと思えるし、自分が学んだことを充分活かせている。
あと、ブラインドタッチやタイピング早打ちができるようになったのは、個人的に大きな成長。今の現場は職場環境や人間関係に恵まれていて、ありがたいなと感じている。これからも、今いる場所で自分の力を思い切り発揮していきたい。