私には双子の妹がいる。似た目元、うり二つの鼻筋、えくぼの場所まで一緒だ。しかしそれぞれの才能まで似かようとは限らない。

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妹は何をするにも長け、器用にこなす。学校で妹はいつも優等生として表彰され、周りや大人からの信望も厚い。それに対して私は妹より成績はずっと下で、妹が当たり前にこなす一つ一つが私には難しかった。

中学生になると、私は妹と比較されることを毛嫌いするようになった。

「妹さん、すごいね」

その悪意のない称賛は、私のプライドを傷つける。

「いや、あなたもやれば出来るのよ」

という慰めは、自尊心を逆撫でする。

そして何よりも、前途有望な妹を妬む自分、その汚れた心が許せなかった。

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転機が訪れたのは、大学進学の時である。妹は欧米語専攻を選んだのに対し、私は日本文化専攻を選んだ。「日本文化が好きだから」と周りには言ったが、正直な所、英語では妹に太刀打ちできないことを悟り、他の専門へ逃げたのだ。

しかし、この一見消極的と思われる判断は、私の人生を大きく変えた。私は研究のため日本に留学し、その後、文部科学省の国際交流員に採用された。現在は高校のALT(外国語指導助手)となり、福井県の高校の教壇に立つ一方で、県立高校に通う中国人学生とも知り合うようになった。

彼らは留学生ではなく再婚した親と一緒に日本に来た子供が多い。そしてこれらの学生と接する中で、彼らのさまざまな心の問題に気が付いた。

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母親の再婚のため日本語も分からないまま高校へ編入させられた生徒、両方の親がそれぞれ再婚してしまい居場所を失った生徒、そして貧窮で進学の夢を閉ざされ、自暴自棄になっている生徒……。

彼らに共通しているのは、愛情に恵まれず育ったことによる自己肯定感の低さであった。 いたたまれなくなった私は、リストカットの痕が残る彼らの手を取り、こう語りかけた。

「長い人生には辛いことが必ずあるの。そしてその辛さを自分の足で乗り越えて、一人前の立派な大人に育ってくものなの。だから、あなた……あなた自身は、自分の味方であってほしいの。自分が自分の味方になる。それだけであなたは今よりずっと楽になれる

無我夢中で自分の口から出たその一言。

その一言に、自分自身がハッとさせられた。

自己否定を繰り返す生徒に、これまで自己嫌悪し続けてきた私が語りかけた言葉、その言葉に、自分のこれまでの過ちと、これから進むべき道が示されていたのだ。今まで私はずっと妹よりできる、できないという、狭い見識の中で拘泥していた。そしてそれに傷ついていたのは、他の誰でもない、自分自身であったのだ。

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私は、教員として働きながら、生徒の心を支える心理カウンセラーとしても活躍したい。そして一人でも多くの傷ついた生徒の心を癒やすことで、自分の心に残るわだかまりを解消したい。

今からでも遅くはない。妬むことしかできなかった妹を心から応援し、いつかは胸を張ってこの言葉が言えるようになりたい。
――自慢の妹です、と。