私と彼は、いわゆる遠距離恋愛というやつで結ばれている。
私は普段、数ヶ月に一度しか東京に帰ってこない。彼は彼で、関東近辺にいるので、平日の夜に東京でさくっと会えるわけではない。そして、来年からは、私が東京に戻ったとしても、彼は九州の方に転勤が決まっている。いずれにせよ、遠距離恋愛は続くのだ。
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そんなこんなな2人なので、数ヶ月に一度、東京で会うたびに、「もっと一緒にいたい」と心の声が漏れてしまう。
東京で会う時は、多国籍料理屋にいって2人とも食べたことのない料理を一緒に注文してみたり、その後ネットカフェにいって、2人で気になっていたAmazonプライムの映画を夜まで見て、終電で帰ったり。あるときは東京で洋風な巨大なケーキを2人でシェアして、リフレッシュハーブティーを一緒に飲んで、2人で手を繋ぎながら次の目的地にいくために山手線にのったり。
今の彼とは、なぜか会ってる時も会っていない時も、その一瞬一瞬が幸せで、愛おしい。
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もちろん彼と一緒にいるとウザい!面倒臭い!と思う時もある。それでも、なぜか、会って彼のまっすぐな眼差しや笑顔を見てしまうと、すべてが許せてしまう。自分でも不思議だ。
私は、そんな彼とのデート前日というより、デートが終わって終電で帰ってきた夜の方が、眠れない。お互い、ふだんは東京以外の別々の地にいて、数ヶ月に一度、東京で出会う。
毎週遠距離で電話し、お互いの近況をシェアするも、やはり会った日というのは、嬉しいのだ。私は彼の大きくて綺麗な手を繋いで、東京駅周辺を2人で歩くのが好きだ。
彼と一緒にいると、なんだか居心地がよくて喋るというより肩にもたれかかって、そのまま平日の仕事の嫌なことなどを忘れて、眠りたくなってしまう。
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生きるのは辛い、世間は辛い、日々目まぐるしく変わっていく。でも、彼といると、彼に甘えてつい、ギュッとくっつき、やっぱりこの辛い世の中を1人でなくて2人で、これからも変わらずに一緒に過ごしていきたいと思ってしまう。そんな安心感や愛しさが、彼にはあるのを彼と一緒にいる私は感じてしまう。
東京でデートした時の夜は、そんなこんなで、その日に見たきらびやかな東京の一瞬一瞬の景色(お互い東京生まれ育ちなのに笑)、2人で食べた味、一緒に飲んだ紅茶のほのかな香り、頬をなでる夜の風の冷たさ、もはや私たち2人しか乗ってないんじゃないか?と錯覚してしまうような夜のガラガラの山手線……。
私たちは、いくつか季節が移ろいでからしか次に会えないのもあり、そんな、2人を包む情景もいつも印象的だ。
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この間、彼と手を繋ぎながら夜の駅構内のエスカレーターを登っていたら、急に黙ってしまいなんだか表情がぎこちないので、「どうしたの?」と尋ねると、「なんか、ドキドキしちゃう……」と素直に胸の内を明かされた。「駅着いたら、ちょっとコンビニ寄っていい?」と。
彼はどちらかというと表情を壊さない人間だったので、急にそんなことを言われて、びっくりした。
それと同時に、私はこれからもっと彼と楽しい思い出を一緒につくっていきたいと思うようにもなった。
次に会う日も、またその日の夜は眠れないのだろう。