大学2年生の時。友人の誘いで、人生初めての合コンに参加した。元々、友人2人は少し前の街コンで会った今回の合コン相手2人と仲良くなって、少し人数を増やして食事会をしようという流れになった。私たちは大学生4人。相手は社会人で、同じ会社の先輩後輩3人。

ひとり遅れて登場した先輩の彼に、一目見て心が奪われてしまった。食事会の中で特に進展があった訳でもなく、その先輩に奢ってもらい、連絡先を交換することも無く1次会でお開きとなった。でもどうしても彼が忘れられなくて、友人づてに連絡先を聞いてもらった。

私がそんなことするのは初めてで、緊張しながらも、先日のお礼を口実に連絡をした。その後も漫画の貸借りのために数十分だけとか、回数を重ねたが、会うのは決まって彼の仕事終わりの夜だった。自分から告白すらした事の無い私は、今の関係をどう進展させればいいのか分からなかった。

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結局、紆余曲折あって、付き合うことが出来た。でも楽しいことばかりではなく、辛いことの方が多かった。久々の恋愛で、私から好きになって、相手は社会人。上場企業に勤めていて、かっこよくて、有名大学出身で。あまりに不釣り合いな私は、劣等感とか、嫉妬とか、夜しか会えない寂しさとひたすら戦っていた。

思っていることを素直に言えればいいのだが、言えずに溜め込んで、最終的に爆発してしまい、長文のLINEを送ってしまうことが何度かあった。良くないと分かっていても、吐き出す方法がそれしか思いつかなかった。苦しくて、悲しくて、分かって欲しくて。でも、嫌われたくなくて。きっと彼にとって私は、重くて、自信がない、ヒステリックな、自分を好きな女子大生だったのだと思う。

結局1年も経たずに彼から振られた。
思い返すと、彼から貰う言葉は、嬉しかった言葉よりも、悲しかった言葉の方が多かった。

私の記憶が正しければ、好きだと言ってくれたのは、たったの1,2回。かわいいと言われたことはほとんど無かった。むしろ「もう少し痩せて、肌が綺麗になればもっと可愛いと思うよ」と何気なく言われた言葉が、ずっと、最後まで心に突き刺さっていた。

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今になって冷静に考えると、彼の何が好きだったのか、分からない。というより実際は、無かったのかもしれない。言ってしまえば、好みのタイプ(顔)で、社会人や高スペックへの憧れ、付き合って「くれている」こと、少しの幸せな時間の思い出にすがっていただけかもしれない。それほどまでに、あの時は盲目だったのだ。

LINEで振られてから、最後に1度会えないかお願いして、彼の仕事終わりに近所の飲食店の駐車場で会った。彼はいつもと変わらなかった。振ったくせに。それが更に苦しかった。悲しそうでも、辛そうでもない。今にも戻れそうと錯覚してしまうほどに。「気持ちは変わらない?」と聞くと変わらないと告げられた。

その日はひとりで居られる自信がなくて、友人の家に夜遅く転がり込んだ。抑えられず溢れ出す涙。時々、涙を飲み込みながら、夜な夜な失恋話に付き合ってもらった。あの日は本当に辛かった。一緒にいてくれた友人には感謝しかない。ひとりでは壊れてしまいそうだった。

それでもずっと居させてもらう訳にも、話を聞いてもらう訳にもいかない。授業もバイトも、サークルもある。それからは、ひとり枕を濡らしながら、寝れない夜を過ごした。

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外が暗くなって、寝る時間だからとテレビも部屋の電気も消して。別れたという事実、最後に会った日、LINE、後悔、頭の中で彼との時間や思い出が全て溢れ出した。感情の大きい波が来ては涙として外に溢れ出し、波が少し引いて落ち着いてきたと思えば、また大きな波がきて、の繰り返し。これが終わる日が来るのだろうか。

朝になると泣き腫らした目を冷やして、授業やサークルへ行った。
バイトも接客をしている時や話している時は平静を装えるからいいのだが、ひとりで黙々と作業をしている時には、やっぱり思い出して、目からこぼれ落ちそうな涙を必死に奥に押し込んだ。

後悔、絶望、喪失感、孤独感。色々な感情が渦巻いて、人生の終わりのような日々。
でも明日は来てしまうから、朝になると涙を押し込めて、夜にひとり泣いた。

そうしていくうちに少しずつ少しずつ、悲しみが薄れていった。

今ではすっかり回復したけれど、あの時は膿を出していたんだと思う。もう出なくなるまで、涙が枯れるまで。その時は終わりがないような気さえするけれど。涙を出し切って、膿を出し切って、眠れない夜を乗り越えた先に、今の私がいる。