「今日の午後、病院に行ったほうがいいと思います。そんなに頻繁に休むのは普通ではないですから」。

天気のいい午後のことだった。いつものようにめまいがして、コンピューターの画面がぐるぐる回って見える。気持ちが悪くて、上司に午後休の打診をすると、そう返ってきた。

上司に「病院に行って」と言われ受診すると、適応障害とうつだった

確かに今月に入ってすでに二回も病欠していた。しかし、以前にも病院で問題ないと言われたのだから、どうせ病院に行っても同じことだ、と思った。

「今日の午後、病院に行って、ちゃんと検査を受けてきてください」。上司に繰り返し言われたので、仕方なく病院に向かう。

内科では異常なし。最近受けた血液検査と健康診断の結果が正常であったことを話すと、心療内科を勧められた。

有休をとって、心療内科を訪れた。ストレスが原因で体に症状が出ているとは思っていたから、うまくいけば、一週間くらい休めるか、などと考えていた。

「適応障害ですね。うつの症状もあるようですし、一か月の休職の診断書を書きます」。驚いた。体の症状があるだけで、心はいたって健康だと思っていた。

しかし、不眠や食欲不振などもうつの症状らしい。一か月は想定外だったが、苦手な仕事を休む理由ができたことは正直嬉しかった。それから、会社とのやり取りがあって、すぐに休職に入った。

私は休職したが、仕事に戻ることを考えるだけで動悸がしていた

一か月の休職は二か月に延び、三か月に延びた。一人暮らしのアパートで、味気のない日々を過ごす。

初めの頃は、医師に言われた通り、一日一回誰かと連絡を取ったり、外へ散歩に出たりしていたが、そのうち無気力になって、廃人のような昼夜逆転の生活をしていた。新卒で入ってまだ一年も経っていないのに。同期はちゃんと仕事をしているのに、と心の声は言う。

仕事に戻ることを考えるだけで動悸がする。そんなに仕事がストレスだったとは自分でも思っていなかった。同じ職場に戻ったところで、また具合が悪くなってしまうことは分かっている。

会社は辞めよう。何か違う仕事をしよう。でも、何を? 求人サイトを見る。転職エージェントも使ってみた。でも、何かが違う。探している方向が全く見当違いのような気がするのだ。

事務作業に適性がないことが分かったのに、また同じような職で探そうとしているからか。いや、そもそも、自分が本当にやりたいことは、会社に勤めていてはできないのではないか。

社会でうまくやっていくことへの適性がない。それをどうしても認めたくなかった。みんなと同じは嫌いと思っていたのに、みんなと同じように、普通に会社員としての成功を望んでいた。

違う会社に転職したところで、自分のやりたいことは会社勤めではない

結局、次の転職先を見つけないまま、退職願を出した。履歴書に穴が開くことはよくないことだと聞いた。母にも、「早く正社員の職を見つけなさい」と言われた。でも、違う会社に転職したところで、自分のやりたいことは会社勤めではない、ということに気づいてしまったのだ。

会社員はやめよう。正社員もやめよう。それは私にとって、大きな決断だった。幼い時から、男性と同じようにバリバリ働くことを目標としてきた分、それを諦めることには勇気が要った。

自分が価値を提供できる場所があるはずだ。のびのびと幸せに暮らせる生き方もあるはずだ。社会に変革を起こすことだってできるはずだ。人とのつながりや、優しさや、愛を、世の中に与える手助けだってできるはずだ。

勇気があれば、人生はいつからでもやり直せると思う。減っていく貯金残高を見ながら、将来への希望に胸をいっぱいにする。

アパートは解約した。新しい地で新しい人生を切り開くんだ。スーツケースを片手に、つば広帽子を被った24歳の私は歩き出した。