〈私〉の分裂を受け入れてくれなかったとき。
唐突なのだが、私の中には複数の人が存在する。いわゆる人格障害というやつらしい。
何度か「かがみよかがみ」で語ってきた人たちも、人格の一つという見解らしい。ただあの頃と違うことがある。表に出るか出ないかだ。
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私の中には物心ついた時から誰かがいた。その子たちはずっと一緒だった。いない日はなかった。けれど中から出てくることはなかった。
変化したのは小学三年生の時だ。弟が生まれ引っ越したことによる新環境、学校内でのいじめの開始。そう言ったことにより心が摩耗したのかもしれない。表に人格が出てきた。
オリジナルの〈美咲都〉が眠りにつき、メインで出てくる〈美咲都〉ができあがった。それを補佐するように、数名の人格が現れた。そしてそれは私にとっての日常になった。
時が経ち、二十歳を超えたころ、私は精神科に通いだした。そのときにはストレスが少なくなったからか、外部との関わりがなくなったせいなのか、メインに出ていた〈美咲都〉以外は表に出なくなった。だから医者にもあまり詳しく症状を言ってこなかった。
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去年の夏、私には恋人がいた。仮名を拓という。
その恋人は忙しい中でも話してくれた優しい人だ。けれど、あくまで普通の人だった。
同時期、私は配信を再開した。そうすることで外部との関わりが増えていった。また去年の秋、忙しくなった彼と連絡があまりとれなくなったこともあり、ストレスが増えた。
それがあったのかもしれない。内部にいた子たちがまたもや表に出てくるようになった。違うのは記憶共有が大半されていること、これだけ。
わたしはそのことを彼氏であった拓に共有したかった。できれば受け入れてほしかった。けれどそれは叶わぬ夢だった。
忙しいのは事実だったろう。と同時に、面倒もしくは理解不能に近い状態になったのは確かだろう。言った途端、彼からの返信頻度がさらに減ったから。連絡が彼から来ることがゼロになったから。
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それでもあの時の私は諦めたくなかった。ずっと一緒にいたいと思っていた。けれどそれは冬に終わりを告げた。
メインで表に出ていた〈美咲都〉の消滅と共に。
新しい私はもう拓に興味を持てなかった。だから次を探した。そして好きな人が現れたのもあり破局した。
自分勝手と言われればそれまでだ。わかっている。けれど思うのだ。相手から呆れられている状態でもう未来はないと。恋は相手がいて成り立つものなのだから。
結局新しく好きになった人とはすぐに別れが来たとだけ言っておこう。相手も人格障害者持ちだったが故に、今度は相手の人格入れかわりが原因だったのだけどね。因果応報というやつだ。
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私が歩みを止めたとき。たくさんいる私を、全ての私を受け入れてくれなかったとき。
何度も私は私たちを受け入れられることを諦めてきた。だからこそ恋人には受け入れてもらいたかった。
今の私には恋人がいる。恋人は私たちを受け入れてくれた数少ない人だ。もう諦めたくないと私は思う。