真夏の暑さにほんの少しだけ秋が混じったような9月になると、ああ、学園祭のシーズンだなあ、と思う。最近は初夏や9月末など少し涼しい時に学園祭や体育祭が行われるらしいが、私は9月になると学園祭を思い出す。まだ卒業して少ししか経っていないが、これからも思い出すだろう大事な思い出が、高校最後の学園祭にある。

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私の高校には、学園祭の3日目にある体育祭の当日に大きな板に描いた絵を団席に飾るという文化がある。私は高校3年生の時に、それを描く係のリーダーをしていたのだ。制作期間は約2週間、メンバーはわずか6人。図案などは事前に決めているが、細部までこだわりたかった私たちにとってはかなりぎりぎりのスケジュールだ。

始業式が終わると同時に、学園祭の準備が始まる。私たちにはパネル描きの他にすることがほとんどないので、朝から日暮れまでエンドレスでペンキを扱う日々となった。最初はペンキが臭い、作業場である廊下が暑い、手が汚れるのが嫌だ、なんて言っていた私たちだが、時間を忘れて作業に没頭するとあっという間に1日が終わる。ペンキにもすっかり慣れて、合唱コンクールの練習にはペンキまみれのカラフルな手で参加するようになってしまった(なんと学園祭中には、合唱コンクールもあるのだ!)

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6人といってもリーダーとしてまとめるのは大変だった。リーダーなどの役職に就いたのは小学生以来で、板につくまで時間がかかった。特に最初は指示待ちをしてしまうメンバーが多かった。「ここ、どう塗ったらいい?」「終わったよ、次何したらいい?」逐一聞かれ、その度に自分の作業を中断していたので全く進まない。少しは自分なりに考えてみてよ、といらいらしたこともあったが、まもなく私の完成のイメージが上手く伝わっていなかったことが原因だと気づいた。そこから原画と私なりの計画を共有したり、メンバーの意見も聞いたりして、原画よりいいものを求めて奔走した。次第に議論も活発になり、臨機応変に計画を変えつつ作り上げていった。効率を求めて役割分担をしてからは、格段に進みが良くなった。

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廊下で作業していたのでクラスメイトがしょっちゅう通りかかる。ありがたいことに私たちの作品を通りかかる度に絶賛してくれていて、とても嬉しかった。プレッシャーに感じることが無かったわけではなかったが、のびのびと作業できる喜びがその何倍も大きかった。
リーダーとして高校最後の学園祭で頑張ることができたこと、そしてメンバーやクラスのみんなの優しさに触れることができたことが本当に嬉しく、高校生活の中で一番の思い出となっている。当時は行事なんて面倒だとあんなに思っていたのに、今はあのクラス内の喧騒も熱気も独特な一体感も、懐かしくて恋しくてたまらない。秋独特の人肌恋しい気持ちも相まって、このエッセイを書きながらも胸がぎゅっとなる。

もう戻れない日々を折に触れて思い出し、当時のやる気に満ち溢れて楽しくてしょうがなかった私を懐かしみ、ちょっと孤独に浸りつつ、これからの秋を過ごしていく。