別れた恋人がつけていた香水のせいで、過去の恋愛を思い出してしまう。そんな内容の歌が流行った去年、私は生まれて初めて香水を手にした。
マイケル・ジャクソンも生前に愛用していたセレブ御用達の香水を購入
コロナ禍にも関わらずお洒落やメイクへの興味が強まった私は、「化粧品は全て自分で選びたい」と、ベースメイク商品からポイントメイク商品まで様々なコスメを集めた。だけど香水だけはなかなか見つからず、地元から遠い地域にあるお店に行ったり、インターネットを使って探した。
すると、たまたま通販サイトである海外の高級ブランドの香水が目に入ってきた。それは私の大好きなマイケル・ジャクソンも生前に愛用していたセレブ御用達の香水だった。高級とはいえ、値段はそれ程でもなかったが万単位はあった気がする。
コスメに詳しい母からは「男の人がつける香りだよ」と言われ、最初は「香りがキツいのかも」と買うのを躊躇ったが、周りのマイケルファンの女の子達も同じ香水を持っているのを見て、「やっぱり好きな人と同じ香りが良い!」とアルバイト代をはたいて購入した。
数週間後、段ボール箱に入ったそれは届いた。
香水を振りかけると、自分とは違う大人の匂いに変貌し、クセになる
箱を開けると、真っ黒な小瓶に金色でブランド名が書かれていて、匂いを嗅がずとも分かるようなダンディーな雰囲気が漂っていた。
本来は男性がつける筈の香水を手にしてしまった私は、恐る恐る蓋を開けてみた。
フワッとバニラのように甘く、ほんのりスパイシーな香りがする。
「これがセレブの匂いか……」
夢にまで見た、「推し」の匂い。まさか自分が身につける事になるとは。私はあまりにも強烈で、刺激的で、それでいて柔らかく心を捕らえて離さないその香りをひたすら嗅ぐという変態じみた事しか出来なかった。
自分に香水を振りかけたのは、更に日にちが経ってから。実際につけてみると、普段のだらしない自分とはかけ離れた大人の匂いにイメージが変貌し、クセになってしまった。
周りは何も言わないものの、自己満足でもお洒落へのモチベーションが上がるのはとても楽しかった。ただ、大変だったのは、花の香りがする為虫が集ってしまう事と、一日が終わってお風呂に入ってもなかなか匂いが取れない事。
色々な意味で人に忘れさせない匂いこそ、香水の魅力なのだと身を以て実感した。
女性らしさと同時に自分らしさも磨けるように、今日も私は匂いを纏う
今の私は普段使い用の石鹸の香りがする香水と、特別な時用の高級な香水を使い分けている。後者を使っている時は、「こんな香りをマイケルのような人が使っていたらそりゃあ惚れちゃうよな……」と物思いに耽る事がある。マイケル関係のイベントがあると必ずつけるようになった、
初めての香水。嗅覚も美しさを際立てる重要な要素。女性らしさと同時に自分らしさにも磨きをかけられるように、今日も私は「黒い蘭」の匂いを纏う。
コロナ禍が明けてマスクなしでも誰かと会えるようになった時に、「素敵な匂い」と思って貰えたら、嬉しくなってしまうのは間違いないだろう。匂いだけでも好きな人と同じって、嬉しいような恥ずかしいような、でもやっぱり、嬉しい。