わたしが一番こわいもの。それはずばり、空気を読み察するJAPAN文化である。
空気を読む。この言葉は良くも悪くも日本人を表していて独特の言い回しだ。
就職、仕事においても右へ習えで没個性が無難なこの国では、近年生きづらさから脱しようと声を上げる人が増え、ようやく個性が尊重される在り方に変わりつつある様に感じる。
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そんな中、私の職場は以前からアップデートされず今もなお昭和のような雰囲気が漂っている。
どこも同じ様なものであろうが、髪はカラー番号指定で髪型まで決まっている。眉毛や化粧、コンタクトまで指定されピアス等のアクセサリー類もイラスト付きの規定に基づき雁字搦め。極めつけには数え切れない暗黙のルールに囲まれ靴や靴下の色や長さの指定まである。指定するなら支給してくれと言いたい所であるが、私は弱い立場の人間なので従い続けている(笑)。
暗黙のルールは空気読みが主軸になっている事が多い。例えば、挨拶無視、希望休は先輩(御局様)から、休日出勤は後輩が、ナースコール対応は新人が、など。どれも誰も教えてくれないのに知らないとこの狭い看護師業界では生きていけないルールなのだ。
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そして、女ばかりのこの業界で生き残るために1番必要なスキルが存在する。どんな女とも目と目で通じあえること、これ一択である。
男性どうかはわからないが、女性同士には話す以外の独自のコミュニケーションツールが確立されている。
口よりも目が雄弁に語るアイコンタクトだ。
私は、空気を読み目を合わせ言いたいことを察し返すこの瞬間が怖い。
職場で行うアイコンタクトは大体が悪い意味で使われることが多い。
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負の感情を目から受け取り、伝わった意を肯定の雰囲気を含ませて目から返す。
例えば、「〇〇さん使えないよね」「〇〇さん来たからもう部屋をでましょう」など。
私には、嘘はできる限りつかず悪口は肯定も否定もしないというマイルールがある。母の受け売りではあるが中学から守ってきたものだ。
口では悪く言わない様に努めてきたがアイコンタクトを返してしまっている自分が怖く感じている。
考えすぎかもしれないが、相手を知る中で、どんどん言いたい事が分かるようになる。すると、悪い意味のアイコンタクトを理解出来てしまった自分も本当は言わないだけで心のどこかで同じように思っていたのではないかと思うと怖くて怖くて。
空気読み(HARDモード)を笑顔で切り抜けたあとは自分に向けられた感情じゃないことに安堵すると共に自分が少し嫌いになる。
嫌なアイコンタクトは、社会人となり公の場ではすぐ言い合えない事により頻回に出くわすようになった。
その度に、手のひらと背中にじっとりと汗をかき形のない悪意と触れ合い、向き合っている。
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小さい頃は、プレゼントを渡すタイミングを見計らうような悪意のないまっさらな瞳のコミュニケーションだったのに、私も怖い存在と向き合ううちに自分を見失い眼が濁ってしまったのかもしれない。
社会で生きていくには必要なスキルであるが、廃れていってほしいと切に願うそんな「こわいもの」の話だ。