変えたくない派と同じくらいの熱量で変えたかった、ありきたりな名字

テーマは「名字について思うこと」だが、結婚前、私は私の名前が嫌いだった。
名字も名前も。
それはキラキラネームだから……とは真逆の話で。どちらもありきたりで同姓同名が多発するほどの名前だから。
調剤薬局では同姓同名さんと一緒に立ち上がり、デパコスのお客様登録ではフルネーム、誕生日だけでも同姓同名がいる為に、住んでいる都道府県、市、区、下手すればフルで住所を伝えてようやく辿り着くこともあるし、他にもネイリストさんや美容師さんでも同姓同名がいた。
沢山いるという安心感はあれど、オリジナリティにかける姓名なのが私は好きではなかった。
特定されるのを防ぐ為、表現することが難しいが、名前を漢字で書いても、あんまり可愛くなくて嫌になる。姓名判断も考慮されてない名前の為、占うと「平均以下の運勢」になり、せめて運ぐらいはよくあれよ、とぼやく始末。
そんな名前が好きになれずに友達には姓名と関係ないあだ名で長年呼んでもらっている。
これが誰から見ても突飛なキラキラネームを嫌がっているという話なら、手続きと裁判で変える方法もきいたことがあるが、私の名前はそうではない「ありきたり」という世間の標準にはハマってるわけで、おそらく裁判を起こしても勝てないと思う。
名前の方は厳しいが、姓は結婚したら変えることができる。
本当にどう書いても身勝手な話なのだが、名前が嫌いな私にとっては、結婚相手が自分と同じ名字か、私の名字よりも多い名字の人でない限りは、ありきたりから離れられるチャンスだった。
好きな人と永遠に毎日一緒に暮らすことができる上に名字が変えられるなんて……!!
そして、お相手探しには何年もかけて苦労したものの、本当に結婚して名字を変えた。
それもあまりいない名字!
窓口行くのめんどくさいなー……と思いながら数日かけて手続きを終わらせた。面倒だったものの、人生の数日だけと思えばさほど苦労には思わなかった。
だってこれで同姓同名に出会う確率はめちゃくちゃ低くなり、生活がしやすくなる上に、なんだかレア感があがって特別な名前になれた気がしたから(姓名判断も偶然ながら、結構良い)。
エッセイを寄稿するにあたり、書きながらもずっと「結婚しても名前を変えたくない」という意見や経験を書いた方がいい気がしてならないけれど。
名字を変えたことで、私は本当に生きやすくなってしまったのだ。
ただ、私が小学生の頃(25年程前)のはじめてのディベートの授業すら「夫婦別姓について」がすでにテーマとして上がっていた記憶があるので、昔からたびたび議論に上がって、反対派と賛成派がいて、どちらにもしっかりとした意見があるんだな、ということが窺える。私の名字を変えたい!という熱量はすごく高かった為、おそらく別姓を望む方の熱量も同じかそれ以上にあるだろうな、と。
私の経験は小さいかもしれないけれど、同姓と別姓、どちらか選べる未来が早くきて欲しいと思う。
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