27歳、人生で初めてのひとり暮らしを始めた。
半年ほど体験してみた感想は、凪。ありがたい静けさだ。
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毎日同じ時間に起きて、仕事をして、作り置きを食べて寝る。変わり映えのしない毎日に嫌気は差すけれど、週末の外出でリセットされる程度。サプライズはないけれど、逆にいえばコントロールできないようなトラブルも起こらない。
1番の快適ポイントは、時間の使い方を自分で決められること。ひとり暮らしをするようになってから、週に1本エッセイを書き、ZINEスクールに通い、オリジナルの手製本を販売した。それもこれも、実家や学生寮など、誰かと住んでいた頃には考えられなかったこと。コソコソ創作をしている自分のせいだが、身近な人間に見られるのも避けたい。老廃物をマッサージで流し出すように、モヤモヤを排出しているから。
洗い物を片付けると、昼間も座りっぱなしのPCの前に戻り、眠くなるまでエッセイを書く。誰かと暮らしていたって時間は確保できるだろうが、相手との時間を優先しがちな自分にとっては、今の環境がありがたい。
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実は、今回のひとり暮らしは同棲の解消から始まった。コロナ禍で2人とも在宅勤務が増え、近すぎる距離感に「これじゃない」と思ったからだ。いい機会だと思って、夢だった海が見える街に引っ越した。同棲生活は当たり前に楽しかったが、1人は1人で充実している。
別居を伝えた知人のほとんどが、彼氏と別れたと思ったらしい。確かに、不動産屋は慰めの表情でひとり暮らしの自由さを説いてくれたし、別れていないと伝えた知人は、「じゃあなんで別居すんの……?」と気まずそうに聞いてきた。
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気持ちは分かる。私も、ひとり暮らしが現実になりかけた頃にいくつも心配をしていたから。「同棲して2〜3年で結婚」が当たり前のルートだと思っていた。同棲のあと、また道が2本に分岐することは予想していなかったのだ。それに、「数年経ったらまた一緒に住みたい」なんて話もしている。たった2年やそこらのために、私は引越し費用を支払って、家財道具を揃えて、つまり大金をかけて距離を取ろうと言うのか。
それより何より、長く続いた同棲で逃した結婚のタイミングが、別居によりさらに遠のくことを心配していた。私たちの関係性はこのままでは行かないだろうと最悪のケースも考えた。
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すべては結果論でしかないけれど、今のところ心配事はすべて杞憂に終わっている。それに、別居を実行に移したことで、大きな発見があった。
ひとり暮らしの快適さは先に述べた通りだが、それ以上に大切な経験をした。引っ越しを機にある程度のお金を使ったけれど、後悔は1つもなかったということ。正直、使ったお金の額さえ覚えていない。つまり、お金を貯めることが最優先事項ではなかったという事実だけは、今、くっきりと浮かんで見える。目先の損得にとらわれずに、本当に求めているものを選び取る経験ができたのだと思う。
そして、今日も私は代わり映えのしない1日を過ごす。超お気に入りの暮らしに、口角を上げながら。