「行ってきます」かつて手を引いた娘は、香港から異国へ旅立っていった

大学生の時に、父と母と3人で訪れた初めての海外。それが、香港でした。当時は、まだ英国統治下で、アジアの顔をした英国でした。
次に訪れたのは、恋人だった夫と。海外が初めてだった彼の目が、驚きで真ん丸になっていくのを覚えています。
その後、家族が増え、幼い娘を連れて再び香港へ。覚えたばかりの英語でいろんな人に話しかける小さな背中を、どきどきしながら見つめていました。
それから、色々な顔を持つ唯一無二の香港に惹かれ、家族で何度も訪れました。レパルスベイで3人でシーグラスを探し、シャムスイポーで大好きな腸粉を食べ、オーシャンパークでパンダを見て、車公廟では一生懸命風車を選び、ワゴンの飲茶でおばさんにスタンプを押してもらう。
スターフェリーやトラムで風に吹かれ、季節ごとの果物を屋台で買うのも、大事なお楽しみでした。
気づけば、かつて手を引いていた娘は、並んで歩くようになり、そして先日、いつものように3人で香港を過ごした後、彼女は初めて、一緒には帰国しませんでした。香港から、異国へ旅立っていったのです。
空港で「行ってきます」と言った背中を見たとき、初めて香港に連れてきた日を思い出しました。どきどきして、応援した背中。あの頃と同じ気持ちで、でも少し寂しくて、少し誇らしくて。
私にとって、香港がくれるものは、グルメや美しい風景やショッピングだけじゃなく、家族の鮮やかな記憶です。きっと、また新しいものを香港で見つけたり、感じたりするでしょう。
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