一番初めに香港へ行ったのはもう20年以上前だ。

映画の中で見た青い空に吸い込まれるようなビルの群れと、張り出した看板に照らされて夜が来ない街。

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ずっとあこがれていたその街に初めて行った時、人と街に圧倒され秒で迷子になった私達は、気づいたら工事現場のど真ん中に出ていた。

ランニングにヘルメットに竹の棒を担いだおじさんに中国語で何とか行きたい場所を伝えると、おじさんからは流暢な英語が返ってきて親切に道を教えてもらった。アメリカ帰りの友人が「完璧にきれいなクイーンズイングリッシュ」と後ろでつぶやいていた。

その10年後、大きな地震のあった春に香港へ行った。コンビニでも、ホテルでも日本から来たと分かると「ここから水を家族に送れ」「お前たちもうここに住んだ方がいい」と何かと声をかけられた。

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この20年何度香港へ行っただろう。
工事現場だったあの場所は立派な紅磡駅になり、今ではどこでも中国語が通じるけれど、張り出し看板は大分姿を消した。
でも今でも店に行けば「2個で割引だから買うべき。1個はママにあげれば喜ぶよ」と声をかけてくれる。

香港は変わり続けて少しも待ってくれない。
だから私は今の香港にまた会いに行く。