転職して1年。正社員として働き始めて、久しぶりに安定した生活を手に入れたはずだった。

でも、私は休職することになった。

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休職する数か月前から、身体にも心にも不調が出ていた。

朝起きるたび「会社に行きたくない」と泣きながら支度をして家を出る。内科にかかり、市販薬を試し、「大丈夫、大丈夫」と自分に言い聞かせる。頭には希死念慮が浮かぶようになった。

「会社に行くか、死ぬか」 そんな極端な選択を、毎朝、本気で考えていた。

それでも、私はすぐに休む決断ができなかった。

「みんな頑張っているんだから、私も頑張らないと」
「これくらいのことで休んでいたら、社会ではやっていけない」

そんな考えがこびりついて、動けなくなるまで頑張り続けてしまった。

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でも、このままでは危ないと思い、精神科へ足を運んだ。先生の勧めもあり、休職することになった。

休職を決めたときは、本当に悔しかった。ひきこもりやフリーターを経て、ようやく掴んだ正社員の仕事だったから。「またダメだった」「普通に働けるようになったと思ったのに」と、自分を責めた。

休職して2か月ほどは、本当に何もできず、ただ横になる日々だった。職場の連絡や通院で精いっぱい。これまで働けていたことが嘘のように、文字通り何もできなかった。

「何やってるんだろう」
「怠けてるんじゃないか」
「もう少し頑張れたんじゃないか」
「甘えてるんじゃないか」

考える余裕が出てくると、浮かんでくるのは自己否定ばかりだった。

でも、3か月目に入った頃、横になりながらふと韓国ドラマを観て、激しく泣いた。自分でも驚くほど泣いた。心が動いたことに、「面白い」と思えたことに、心からホッとした。

休職する前は、大好きだったはずのアイドルも、音楽も、ドラマも、一切興味がなくなっていた。「うるさい」「つまらない」としか感じなくなっていた。心がマヒしていたんだと、そのとき気づいた。

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少しずつ、友達や昔お世話になった人に会いに行ける余裕も出てきた。

誰かと話すことで「ひとりで頑張りすぎていたのかも」「ひとりで生きていけるように、と気負いすぎていたのかも」と思った。

それから、私は今後について考えた。お金のこと。仕事が苦しかった理由。これからどうしたいか。

「戻りたくない。戻ったとしても解決策はなく、同じようになるだろう」 

それが、素直な気持ちで正直な結論だった。

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「もっと続けられたんじゃないか」と思う気持ちが、まったくないわけじゃない。

でも、あの3か月があったから、後悔はしていない。自分にとって大切なものを見つめ直し、復職か退職か、本気で考えた末の決断だったから。

そして、退職届を出したとき、はっきりと思った。「私は、この会社にいた期間、本当につらかったんだ」と。

今の私は、無職だ。この先どうするかも決まっていない。でも、今はそれでいいと思う。
ちゃんと、辛さも楽しさも感じられるようになったから。

焦らなくてもいい。止まってもいい。心の声も、身体の声も、大事にしていこう。

休職の延長として、もう少しだけ、自分を休ませてみようと思う。