「女性が社会進出するなら、男性が社会退出してもいいじゃん。これこそ最強の男女平等じゃない?」
そんな会話を大学生の頃、大親友としていた。
これが、最強の男女平等なのかはさておき、

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女性に社会に進出する自由と権利があるなら、男性にも社会という労働市場から退出する自由と権利があるのでは、と思う。
それにも関わらず、男性の育児休業はたったの数日から数週間程度が多く、いわゆる「寿退社」はたいていが女性。
「妻の仕事を優先したくて」「妻が海外転勤になったので」という理由で、転職をする男性や、退職して専業主夫になる男性に、今まで何人出会っただろう。
私の社会人生活は数年程度だけれど、今のところ0人だ。
「夫の仕事の関係で」「夫が海外転勤になったので」という理由で、正社員の仕事を退職する女性の方が多く知っている。
女性の社会進出が叫ばれるなか、男性が社会から退出することはあまり許容されていない。
男性だって、「家庭のことも、子育てのことも、自分の人生のこともあるので、仕事辞めます!」と言っていいと思う。だけれど、その勇気を出せるほど、この社会はまだ優しくない。
生きていくために、お金を稼ぐために、仕事は人生から切っても切り離せない。
仕事をしていると、ただお金を稼いでいるだけで、お金を稼ぐ仕事はしていない人より少しばかり優位な立場に立ててしまう。

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女性の社会進出に関して言えば、「頑張って働くワーキングママ」像を少しだけ強引に、社会全体から強要されている気がしてしまう。
私が様々な事情から大学院へのストレート進学を諦めて、まずは「自分でお金を稼ごう。経済力を身につけてからやりたいことをやろう」という決意で就職活動をしていたとき、各企業の新卒採用サイトや就活イベントページからは、違和感しか感じなかった。
キラキラした「バリバリ働く女性管理職」「仕事も子育ても両立させる中堅女性社員」「大きなプロジェクトを任された若手女性社員」ばかりが、先輩女性社員として紹介されていた。
社内における女性の活躍は、女性が男性社員と同じようにバリバリ働いて、仕事をこなして、夜遅くまで残業して、ピンヒールで歩きながらかっこよく仕事をするということを意味しているらしい。
「女性が働きやすい職場」のアピールとして、女性の産休育休の取得率や女性社員が育休復帰後も活躍するキャリアプランが紹介され、「旦那さんがもし転勤になっても一時休職して復帰できますよ」といった内容がいかに女性にとって働きやすい環境かを示すポイントとして使われた。
「育休を取得した男性社員」の紹介や「妻の海外赴任やキャリアのために一時休職して復帰した男性社員」は紹介されない。
男性だって子どもを育てる。
そもそも、子どもの誕生には、男性と女性の両方の生殖能力が必要なのに。
結婚していても、結婚していなくても、もしくは同性という理由で結婚することができなくても、どんな形のパートナーシップ関係であっても、子育てが社会全体の問題だと思う。

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大学の授業で、ある労働法の女性教授が言っていたことを思い出した。
その先生は大学卒業後、大手航空会社に入ったけど、「女性の出世の道が作られていない」と思って2か月で退社し、中央省庁に入省してバリバリ定年まで働かれた、同じ女性として本当に憧れる素敵な先生だった。
「役員や管理職が全員男性の会社には注意すること。女性を本気で活躍させて、出世させるつもりがないか、女性が管理職につきたいと思わない職場のどちらかよ」と言っていた。
その言葉を胸に、私は就職活動をしていた。

私たちの母親世代は、「結婚したら家庭に入る」「子どもができたら仕事は続けられない」認識が一般的だった時代だったと思う。
それがいつのまにか、「結婚しても働き続ける」「子どもができても働き続ける」という認識にシフトした。だけれど、現代において、女性の働き方には2通りしかない気がしている。男性と同じようにバリバリ正社員で働き続けるか、派遣社員や契約社員、アルバイトなどの非正規雇用でなるべく定時上がりできる仕事を続けるか。
私だって、男性に負けないくらいの勢いで仕事をこなしたい、キャリアを積みたい。
一方、男性は男性で、「男なのに同期入社の女性社員が早々と出世していった」というのは居心地が悪いのかもしれないとも思ってしまう。

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これから私はどんな働き方をしていけばいいのか、正直まだ分からない。
だけれど、今の私の働き方にはとても満足している。
残業で夜遅くなることもあるけれど、とてもやりがいがある仕事だ。女性であることを気にしたことは全くない。
それはきっと、私の職場において、私が所属する部署ほど女性率が高い部署はないからだと思う。私の部署では、部長も課長も女性だ。
いつか、女性がある組織や企業、国のリーダーになっても、"女性"という理由でニュースにならない時代がきてほしい。