逃げることで新たな自分に気付ける。今、私は自分らしく生きているよ

きっかけはストーカーまがいの行為。自分はメンタルが弱めである自覚はあったが、それにしても想像の斜め上の理由だった。仕事がいっぱいいっぱいで、とかパワハラで、とかじゃなくても人の心は病むのだとそのとき初めて気づいた。
最初の休職は、3週間。病名は適応障害。今ならそんな短期間では何も治らないよと言ってあげられるが、当時は大丈夫だと思った。そして、3週間後復帰した。
復帰してからも不眠、食欲不振などの症状は続き、しまいには簡単な判断もできなくなった。ファミレスに入って、自分が何を食べたいか、どれだけ考えても決められなくて、涙が出てきた挙句何も食べずに帰ることさえあった。お店からしたら迷惑でしかない話だ。それでも仕事には無理やり行っていた。必死だった。
しかしだんだん朝出勤するのが辛くなってきて、ある日父親に「病院、行こう」と言われ即日予約可能なクリニックに連れていかれた。病名はうつ病に変わっていた。
医師に「休みましょう」と言われ、1ヵ月休職する旨の診断書を書いてもらった。ほっとした、というのが正直なところだった。ああ、もう毎日しんどい思いして出勤しなくていいのだ、と。
それからの1ヵ月、どう過ごしていたのか、あまり記憶にない。インスタグラムでスクラッチアートの投稿をしていたのが残っているから、好きなことはできていたと思う。寝てばかりいたような気もする。
1ヵ月後もあまり症状は変わらず、休職は延長となった。休職は延長を繰り返し、結局、1年半ほど休職することとなった。症状がよくなり始めた、と思ったのは最後の半年くらいだったと思う。
休職して気づいたのは、しんどいとき、我慢するのではなくすぐ逃げるのが一番心身にとって大事だということ。私は最初の休職は3週間で無理やり復帰してしまったし、最初の休職までも2ヵ月くらい無理やり出勤していた。もしあのときすぐに逃げていたら、こんなにしんどくなかったかもしれない、と何度も後悔した。
しかし、休職をしたことで得たものもたくさんあった。同じように休職している友人や、新しい趣味、それから、自分を大切にする時間を持つ、ということ。家で紅茶を淹れてゆっくりリラックスする時間をとったり、編み物をしたりと、自分をいたわることで心を回復させることができた。
また、一度ゆっくり休むことで、自分を見つめなおす期間にもなった。自分が本当にやりたいこと、やりたくないことを考え直すいい機会だった。私は何回かの休職を経て、自分が本当にやりたいのは大好きな本に関わる仕事だ、と気づけた。
そこで公務員を辞め、図書館司書の仕事に応募したり、古本屋のアルバイトに応募したりした。今は古本屋のアルバイトとして自分らしく働けていると感じている。いつかは自分のお店を持ちたい、という夢もできた。
今、目の前に過去の自分がいたら、「逃げること、休むことは悪いことばかりじゃない」と伝えたい。逃げることで新たな自分に気づくこともあるよ、今、私は自分らしく生きているよ、と言ってあげたい。
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