自由になったような、なってないような。自分を取り戻すための私の休職

社会人になって2年目の夏終わり頃。私は休職した。前々から限界は感じていたけれど、夜眠れない日々が続いたことを期に、1ヶ月先の病院を予約して、適当な予定で誤魔化して、有給をとった。
診察の後、診断書と薬を受け取った。良かった、診断書を貰えなかったらどうしようかと思った。診断書がないと、休めないでしょ。こんなのおかしいな。そして、証拠だと言わんばかりに、震える手で上司へ差し出し、休職を申し入れた。引き継ぎのために、休職までは少し期間を空けて。でも休めると思ったら、それまでの辛さはもう感じなかった。
私のいた会社の規定では、休職は最大1ヶ月(確か、勤続年数にもよるかもしれない)。その期間に、復職か、退職かを選ばなければならなかった。一刻も早く、この会社から逃れたいという思いと、部署が異動できるのなら、残った方が、収入も途絶えないしいいのかなという思いで葛藤しながら、とりあえず休もうと、 休職期間に入った。
休職期間は、第1に休むこと、そして好きなことをして過ごすこと、自分の好きをとり戻すことに専念しようと思った。働いて、過度なストレスをずっと感じながら、好きだったことに興味をもてなくなったり、休日に出かけるのも楽しくなくて、どんどん自分の生活が色褪せていくような気持ちだった。それを取り戻すかのように、昔好きだったドラマや映画をレンタルビデオ屋でかりてきて、1日中観た。サブスクの無料体験に会員登録して好きなアニメを1話から全てみた。
もちろん働かずに、ただただぼーっとしている自分に、罪悪感もあった。
幸いなことに休職する前から同棲していたパートナーがいたため、昼夜が逆転することもなく、それなりに1日1日を過ごした。休日になれば、彼と出かけたり、たまに旅行したり、いつも通り。ちょうどコロナの影響で、世間的にリモートワークが積極的に行われていた頃で、彼も週の半分くらいは家にいた。昼食だけ用意したり。1ヶ月の休職期間はあっという間に過ぎた。以前からあれほど訴えても叶わなかった部署異動の打診もあったが、私がこうなった元凶とも言える上司のいる環境下にはとてもじゃないけど、戻れる気もせず、残りの有給を消化して退職。
使って残った分が貯金額みたいな感じで、ちゃんと貯金というものをしていなかった私だけど、大きな買い物もそこまでしていなかったこともあって、100万円以上は手元にあった。それも、焦らずに休憩ができる要因のひとつだったと思う。私の場合はたまたまで、意識的に貯めてはいなかったけど、すぐに生活に困るわけでもない。そして、うつと診断されたため、失業保険も猶予期間なしでもらうことが出来た。
そして無職となり、社会的地位もなにも無くなった私。自由になったような、なっていないような。そうして更に1ヶ月、2ヶ月と過ぎていった。
決して否定せず、むしろ金銭的に困ったら言ってね(普段の生活費は折半のため)と言ってくれていた彼も、私が無職のまま家にいること、今後働く気があるのかどうか心配になったらしく、ある日「今後の(働く)予定を教えてくれる?」と言った。
もちろん働く気もあるけど(たまに転職サイトを覗き込んだりして)、まだ自分がどうしたいか、 何ができるかもわからず、休むことを優先してきた私は、責められている気がしてしまって涙が出た。私だって、こんな現状を望んでいたわけじゃないし、私が一番今の状況に憂いている。お金だってちゃんと自分の分は自分で払っているし、働くつもりもあったし。
それがきっかけだったか定かではないが、確かにそろそろ動かないといけないよなと思い、 調べた結果、職業訓練というものがあると知った。お金も貰いながら学べるらしい。すっかりだらけてしまった生活スタイルを整えるように、職業訓練の面接を受け、2,3ヶ月の授業が始まった。同じクラスで学んでいた人たちは、全体的には年齢層は自分より高めで、主婦をしていて、就職を目指しているような人が多かった印象。
授業の他に、キャリア相談の時間もあって、相談に乗ってもらいつつ、時に自分でハローワークや転職サイトと睨めっこをした。
金銭面では、通帳の金額が100万円を切る前に再就職先を見つけると、ひとり心に決めた。
そして、少し弱腰で初心者向けの職業訓練コースを選んでしまったがために、まだ気持ち的に余裕があった。そこで同時進行で簿記3級の勉強も独学で始めた。再就職前の合格を目指して。
無事に簿記3級の合格、再就職が決まり、職業訓練を修了し、およそ半年の私の無職生活は終わりを告げた。
私が休職、退職して過ごしてきたのはこんな日々。社会人になって久しぶりに、自由になって自分と向き合った日々だった。
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