大学四年生のGWに私は一人で長野県上諏訪に来ていた。初めての一人旅だった。

当時の私は進路や恋愛に悩み、頭を抱えていた。うじうじ考えても仕方ないと、思い切って大胆に初めての一人旅に出ることにした。

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目的地に着くまでも、特急が途中で数時間も止まってしまうようなトラブルにも見舞われ、途中下車を悩みながらも、元々の目的地である上諏訪で酒蔵巡りをすることにした。

初めての一人旅にして、酒蔵巡りとは珍しいだろう。日本酒が大好きな私は、各蔵の飲み比べで日本酒の色や香り、味わいを心ゆくまで楽しんでいた。

それが中盤に差し掛かった頃、「女性で一人旅すごいわね。お若いのに日本酒がお好きなんですね」と老夫婦が声をかけてきた。そこから会話が広がり、共に次の蔵を目指していた。

基本はご夫婦が先に飲み比べをし、私が後に続いた。飲み比べは数種類の中から三種程選ぶ形式だった。そこで先に飲んでいるご夫婦に「これ美味しいから飲んでみて」とおすすめしてもらい、それはまさに私の好きな日本酒だった。

一人旅だったはずなのに、ご夫婦と美味しさを共有しながら巡っていた。

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私は、旅は人生だと考える。計画の有無に関わらずトラブルは起こるし出会いもある。

だから人生も予定外のことに飛び込んでみても、トラブルもあるだろうけれど、出会いもあるかもしれないと思う。そんな教訓から、私は計画とは違った道を目指すことにした。