八面六臂の活躍で私のテンションを下げてくる梅雨の、いいところ

梅雨はどんよりとして低気圧と一緒にテンションも低くなってしまう。
せっかく朝スプレーで固めた髪の毛が外に出たら湿気を含んだ空気によってウネウネし、駅のトイレの鏡を見て落ち込むことが多い。ストレートパーマをかけても無意味で、海藻のようにコシがなくなってしまうので自然の脅威を思い知る。
肌もベタついてメイクが崩れるし、Tゾーンは皮脂が嬉しくない大活躍をする。まさに湿気の八面六臂である。
美容面は以上だが、肉体面も芳しくなくなる。
気圧で体調が良くない日が続く。朝起きたくないしずっと眠い。梅雨冷えでむくむ。私は基本的に一年中四六時中不調だけれど、梅雨はダル重くなってより不活動的になる。
それに伴い精神面もダダ下がってしまう。個人的には高気圧はハイになる時が多く、怒ったり笑ったり忙しいが低気圧はバッド入ってずっと悲しいし憂鬱だ。日和見主義も甚だしい。
だが、そんな梅雨の時期も嫌なことばかりではない。
紫陽花祭りに足を運ぶと、絵の具で色付けしたような原色の紫陽花に出会うことができる。紫、青、水色、ピンクなど見目麗しい花々のドレスのファッションショーが開催されている。
個性豊かでどのカラーも美しく、短い命を目一杯使い果たすかのように咲き誇っていた。
カタツムリやカエルがファッションショーを覗きにやってきて釘付けになっている。
私も一緒に見惚れて写真をたくさん撮影してしまう。
そして、傘に当たる雨の音が耳に心地よくて結構好きだ。固めの素材の傘に当たるポツポツというよりもボツボツというたくましいR&Bのような音。ビニール傘に当たる軽快なJロックのような疾走音。どちらもそれぞれの魅力があっていいと思う。
外に出る時は外界の雑音をシャットダウンするために基本的にはワイヤレスイヤホンを耳にはめてから出かけるが、King Gnuより雨、という時だってある。そういう時は目的地についてからイヤホンをはめる。
また実家の玄関の前にある木製のフェンスのせまい隙間にカエルがふてぶてしく鎮座しているのを見るのが高校の時に好きで、梅雨時に玄関を開けるとどこか期待している自分がいた。元々カエルは好きではないのに、目を瞑って座っているのが面白くてよく写真を撮っていた。あの時のカエルの心情が気になるし、同一人物だったのだろうか?一体どんな気持ちであそこに頻出していたのだろうか?でもあいつも今は鬼籍に入っているんだと思うと悲しくて仕方がない。
食べ物が腐りやすい季節ではあるが、さくらんぼの旬だ。東北の祖父母から毎年何箱も大きな立派なさくらんぼが送られてくる。佐藤錦という品種は甘酸っぱい恋の味がする。
噛むとじゅわっと果汁が広がってみずみずしい。梅雨の邪気を祓ってくれるような爽やかさで、もうすぐそこまで来ている夏を両手を広げて歓迎しているかのようだった。
私は秋の湿気を含まないカラッとした空気とちょうどいい気温が好きなので、その逆の梅雨はやはり苦手である。
でもどんなことでも探せば良い面はあるから、なるべく嫌なことに目を向けずに過ごしたい。それが人間関係となると途端に難しくなってしまうのだけれど。
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