「家事」って最強。暮らしの本質を知って、稼ぐことへの不安が消えた

仕事を辞めた。
16年間働いてきたので、辞めると決心するまでに、ものすごく悩んで、葛藤して、精神的にもしんどかった(なんと円形脱毛症にもなりました)。
働いていた環境への未練はなかったけれど、辞めた後の、自分の生き方について考えるのがしんどかった。その中で最もクリアできなかった悩みが「これから、生活できる分のお金を稼げるのだろうか?」「自分がほんとうに幸せだと思うことは何だろう」ということだった。
「いくらあれば幸せな暮らしができるんだろう?」
「っていうか、お金を稼がないと幸せに暮らせないのか?」
自分が思う幸せって何かを考えてみる。
旅行、華やかな食事、オシャレ、広い家で過ごすこと……?
楽しみと幸せは違う。
自分の幸せのヒントになる言葉を探すために、いろんな人の「暮らし」の本を読んでみた。
そしたら、私が思う「幸せな暮らし」をしている人を見つけた。
料理家の「高山なおみ」さんと、エッセイストの「稲垣えみ子」さんだ。
お二人の本は、主に日記のようで、大きな出来事ではなくて、日々の暮らしを中心に、ふと気付いたことを淡々と書き綴っているものが多い。
お二人に共通していることは、自分の「足元」を大切にしていることだった。私は恥ずかしながら、お二人の本に出会うまで、野菜の旬も買い時も、雲の姿も、近くの公園の木の様子も、風の匂いも、なんにも知らなかった。
いつものご飯を作ること、部屋を掃除すること、近所の人を大切にすることが、心を強くしていることも知らなかった。
お二人の目を借りて、私の足元の暮らしに意識を向けることができた。そして、毎日の足元には、小さいけれど、大きな変化があって、「あっそうなんだ」って知ることがあって、その繰り返しの日々はこんなに尊いんだって、分かった。
体を使って、今をしっかり感じて、毎日が「ある」幸せが、お二人を通して発見できた。
自分の一番近くにある「暮らし」を見ている人は強い。
何かを成し遂げたい、成果をあげたい、人気者になりたい、お金を稼ぎたいなど、みんな何者かになりたがっている。そのために、自分のケア、自分の周りの整理・家事は、便利な家電や便利なサービスを利用する風潮になっている現代。
その先の幸せって何だろう。
評価や名声ばかりを追いかけて、自分のケアは、「してもらう」ことに幸せを感じていては、何もなくなった時に「寂しさ」だけが残ってしまう。
「私は自分の力で、自分の幸せを作り出すことができる」と思えたら、それって最強ではないか。
そして、自分の力とは、大それたことじゃなくて、お金も、特別な能力もいらない。足元の日々の小さな暮らしを見つめること。何にもないと思えることの中にも、すごく楽しいこととか面白いことが、昨日と違う変化がたくさんあって、そこをどんどん発見していけるような自分になることが、自分で自分の幸せを作ることにつながると思う。
稲垣えみ子さんは、その行為は、「家事」であると言っている。
「家事」が最強。そして、家事の大切さを知っている私たち、最強。
家事をすることによって、どんどん足元の幸せを感じられるようになる。小さな変化を見れるようになってくる。
それは、活動や生産性などとは真逆で、どんどん行動範囲も狭く、生活も地味になっていくように見えるかもしれないけれど、人間の一番最後に必要になってくる考え方だと思う。
寝たきりになっても、幸せを感じられる自分がいたら、人生勝ちだ!
お二人の「暮らし」に出会ってから、「稼がなきゃ」「どう生きていこう」という不安が消えた。
とにかく足元を見て、毎日家事をして、自分自身を満たす。
そのように暮らしていくと、とても心がどっしりとしてきた。
何が起こるか分からない世の中だけど、いろんな状況に対して腹を括って暮らしていくことが、生きる醍醐味なのではないかとも、考えられるようになってきた。
何も持ってなくても、自分で自分を整えられる「家事」ができることが、今一番の強さだと感じている。
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