皆はよく、「お金が足りない」と言う。
実家を離れるとどれだけお金がかかるんだろう?と、手元にある我が家の三人暮らしの家計簿を元に、一人暮らしのお金と、二人暮らしのお金の計算してみた。

「自分の一人暮らしはこんなもん」の目安で、かかるお金を計算すると

一人暮らしなら、
家賃 5万円 (駐車場代、諸経費込み)
食費 2万円 (自炊メインなら、これで足りそう)
水道・光熱費 2万円
車代 1万円 (場所により、かなり変わるだろう)
雑費 2万円
貯金 3万円
お小遣い 3万円
手取り18万円あれば生きていける。

二人暮らしなら
家賃 8万円
食費 4万円
水道・光熱費 2万円
車代 2万円
雑費 3万円
貯金 5万円
お小遣い 6万円 (各3万円)
この内訳なら、2人で月に30万円稼げば生活ができる。

もちろん、無理のない生活がどの程度かは人それぞれだから、もっと必要な人はもっと稼げばいい。住んでいる場所などによっても、必要な金額は変わるはずだ。
少なすぎるとか、多すぎるとか、まぁいろいろあるだろうけれど、「くじらが一人暮らしをしたらこんなもん」という目安で立ててみた。多少余裕を見て計算した。
一人暮らしをしたことがない人の試算だから、ズレや漏れもあるかもしれない。それでもだいたい、こんなもんだろう。

遊びで不自由はせず、身の回りのものは母が手作り。楽しかった

そこまで収入がなくても、幸せに暮らせるのではないかと私は思っている。
私の両親は、手取り年収200万円を大きく下回った状態で子供を産み、その子供2人を大学と大学院まで進学させた。
私たちが生まれて、母はパートで働きにも出たが、今と違って子供を産んですぐ働くことはできなかったし、父の給料も大きく変わることはなかったようだ。
両親はかなり切り詰めていたようだし、子育ても周りの協力あってのことだったけれど、それでもお金を理由に子供を持てないなんて嘆くことはないだろう。

おもちゃも古いものを長く使った。竹とんぼやコマも回したが、トランプをしたり、庭で遊ぶことが多かった。
弟が庭や公園で虫を取ってきて、私はそれを一緒になって楽しんだり、大きくなってからは遠巻きに見るようになったりした。
図鑑を読んだり、記憶力クイズ対決をしたりした。私は何度も図鑑や生き物のカードを読んで覚えた。親戚で集まっても、ボードゲームやトランプなどで遊んでいた。
私や弟が何かに興味を持つと、祖父母はわざわざそれを調べてでも私たちに教えてくれたから、暇にはならなかった。
幼稚園へは、母が刺繍をしてくれた園服を着て、遠足へは母が作った鞄を背負って、袋なども全部母が作ったもので、私は楽しく過ごしていた。

既製品に手が届いてしまうと、すぐに飽きた。皆同じでつまらない

小学校に入ってしばらくして、やっぱり家は貧乏なんだと自覚した。持ち物が皆と違うことに気がついてしまったのだ。
皆は既製品の、きれいな小物や袋を使っていた。私の持っているものは何だか違った。
私の布製の持ち物は相変わらず、全部母の手作りだった。独学で、家にあるものを使って作った母の手作りの品は、不恰好ではないけれど、皆のものとは少し違う。
悲しくなって、お金持ちになりたいと思った。既製品のものが欲しいと強く願った。皆と同じがよかった。私だけが、皆とは違っていた。

中学に上がり、お小遣いでやりくりするようになると、既製品にも簡単に手が届いた。手が届いてしまうと、既製品にはすぐに飽きた。皆同じでつまらない。
ある日筆箱を自分で作ると、皆に驚かれた。
褒められたことは意外だった。実はよく見ると結構粗があるんだけど、説明しても貶されることはなかった。

思い出してみれば、母の作った鞄はよく褒められていた。幼稚園の頃は当たり前だと思っていたし、それ以降は褒められても不本意で縮こまっていたけれど、やっぱり手作りっていいんだ。
「お母さん、何でも作ってくれていいね」「くじらの家は楽しそう」
やっと、貧乏暮らしでよかったと思えた。

衣食住が足りたら、お金以外のものにも目を向けた方がいい

皆、あまりに貧乏を恐れているように思う。
この程度の貧乏は、そんな恐ろしいものではない。このくらいなら楽しく生きられる。
たくさんお金を使わなければ幸せじゃないだとか、よくないだとか、惨めだとか、一体どうしてそう思ってしまうんだろう。
お金をたくさん使う生き方も、その人の生き方だとは思うけれど、その思い込みが過度な人たちは、お金を使う幸せしか知らない、寂しい人だと思った。

私だってお金は欲しい。いらないなんて言わない。でも、衣食住が足りたら、お金以外のものにも目を向けた方がいい。

いい化粧品はやはり違うけれど、佐伯チズ氏が言ったように、安いものでもしっかり塗り込むと肌がきれいになった。
祖母が作ったお菓子はもちろん、パンの耳でも焼いて砂糖をまぶすとおいしかった。
図鑑で遊んでいたからか、植物や動物には多少詳しくなった。まぁ、あまり役に立たない知識ではあるけれど。

「現在の超消費主義社会のお陰で、私たちはもっとも肝心なことを忘れてしまい、人間の幸福とはほとんど関係ないことに、人としての能力を無駄遣いしてしまっているのです」とは、世界一貧しい大統領として知られる、ウルグアイの元大統領ホセ・ムヒカ氏の言葉だ。
日本を高く評価しながらも、取材に来た日本人に「日本人が幸せなのかは疑問だ」という風に話していた。私は「日本人は幸せだ」とはっきり答えることができない。恵まれた国であるにもかかわらず、心が貧しくなってしまった人が多いように見える。
皆いろんなことに支配されてしまっている気がする。お金に支配されず、自分の幸せを掴んで欲しいと心から思う。

参照 : 世界でもっとも貧しい大統領 ホセ・ムヒカの言葉 佐藤美由紀 著