私は旅行が好きではなかった。家で気兼ねなくのんびりする方が好きだった。しかし、自分から旅行に行く気はなくても、家族に誘われたり学校の行事に参加したりで、旅行に行かなければならない場面が何度かあった。

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学生の頃は大会で市外や県外に行くこともあった。大会関係の引率の先生と仲が悪かった私。先生に「あなたの好きにしろ」と言われ、知らない土地でポツンと1人になることがあった。半1人旅行のような状態になっていた。不安だった。知らない土地で、好きにしろと言われてもと、とても困った。

すると、私の困っている姿を見て周りの人が声をかけてくれた。「1人なの?」「大丈夫?」「暑いからこれでも飲みな」とお茶もくれた。見知らぬ私にとても親切にしてくれる人たちがたくさんいた。同じ大会に出場する人は、「一緒に行こう」「困ったらなんでも言って」と笑顔で声をかけてくれた。

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旅行が億劫で好きではなかったが、私は旅行を通して人の温かさを実感することができた。だから私は旅行が少しだけ好きになった。旅行を通して、新しい発見をしたり、新しい出会いがあったりする。そして私の人生を豊かにしてくれると思った。

それから私は、旅行先でお世話になったホテルや旅館、出会った人に、地元の伝統工芸の蓮鶴と手紙にお礼を書いて帰ってくるようにしている。自分がもらった優しさを少しでも返すことができたらいいなと思いながら。