あれは、22歳の夏の終わりのこと。
学生だった私は、まだ恋愛にも学業にも慣れていなくて、何もかもが新鮮で、でもどこか不安定だった。

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あの時の自分は、今の自分とは少し違って、どこかしら無防備で、心のどこかに何か足りないものを感じていた気がする。

その日は友達と夜遅くまで飲んでいて、気づいたらその場に彼が現れた。

最初はただの顔見知り程度だったけれど、気づけば話が弾んで、二人きりになっていた。

何だか不思議な感覚で、会話の中でどんどん距離が縮まっていった。

その後、どうしてあんなことになったのか、正直覚えていない部分も多い。

だけど、どちらともなく、何となくの雰囲気で、気がつけば一緒に過ごすことになった。

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正直言うと、その時はすごく惹かれたとか、深い理由があったわけじゃなくて、単にその瞬間の気分に任せていた気がする。若いって、そういうところがあるんだと思う。

そして、朝が来た。目を覚ました時、彼はもういなかった。部屋にはひとこと「ありがとう」とだけ書かれたメモが置かれていて、その瞬間、私はちょっと不思議な気持ちになった。なんとなく、虚無感と解放感が入り混じった感じで、でもどこかでそれが心地よかった。

あの一夜は、今振り返ると、ただの一夜の出来事として終わったようにも思える。でも、実はその夜の経験が私にとって、何か大事な気づきを与えてくれたんだなと今なら思う。あの時、私は恋愛や自分の気持ちに無自覚だった部分が多かったけれど、あの一晩があったからこそ、自分が本当に求めているものや、大切にしたいと思うことが少しずつわかってきた気がする。

もう二度と会えなくなってもいい。
でもすごく熱い何かを感じている。

もしそうならば、ワンナイトもいいものなんじゃないかとさえ思う。

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あれから数年経って、あの夜のことを思い出すことは少なくなったけれど、心の中でふとした瞬間に蘇る。ワンナイトって、結局のところただの一夜で終わることが多いけれど、それでもその時に感じたことや学んだことが、後になって大きく影響することってあるんだなって思う。

朝が来て、すべてがリセットされたような気がしたけれど、あの夜があったから今の私がいるのかもしれない。