関係が終わるのが嫌で、とりあえずLINEで返事を送り続けた

夢すら普段見ないほど熟睡する私にも、時に眠れない夜がある。
あの夜もそうだった。眠れない、というよりも多分、眠ってはいけない、そんな感じだったと思う。

マッチングアプリで出会った男性と一夜を過ごした日のことなのだが、正確に言えばそのワンナイトが印象に残っているわけではない。眠れない理由が他にあったのである。
その理由は、ワンナイトの相手ではなく、アプリで知り合って仲良くしている別の男性にあった。
その男性とは何度か出かけて仲良くさせてもらっていて、毎日何往復もLINEをする仲だった。その日も例に漏れず連絡をとっていた。
そして勢いづいてワンナイトのことを彼に言ってしまった私は、ホテルの一室で行為を終えて相手が寝ている時も、彼からなんと返事が来ているのだろうかと気が気でなかった。
そこから、私の眠れない夜が始まる。当時の私はそんなことは知る由もない。

連絡をとり始めたのは夜中の2時くらいだったと思う。普段ならば寝ている時間なのに、彼は珍しく起きていた。
連絡を続けていたのは、彼がその事実を知って呆れたというか、もう私と縁を切るような、そんな雰囲気で会話をしてきたからだ。
関係が終わるのが嫌だった私は、とりあえず返事を送り続けた。LINEという、顔の見えないコミュニケーションにおいて、ここまで相手からの冷たい気持ちを感じたのは初めてだった。どうにか関係を持ち直したいという一心だった。

何度も返事をした。拒絶や否定の言葉が送られてくる度に絶望した

スマホ片手に私は泣いていた。それは、彼のそういった態度や冷たさにではなく、彼との関係が終わろうとしていることに対してだった。
泣くぐらいならば、最初から余計なことなど言わなければいいのだが、送った言葉はもう消せない。知った事実を知らないことには出来ないのだ。

洗面所の電気をつけて、半開きにした扉からの明かりを頼りに、ベッドの脇にうずくまり、ずっとやりとりを続けた。たくさんの言葉が画面を飛び交っていた。一体何往復したのだろう。
どうでもいい、とか突き放すような言葉を何度も言われた。
いやだ、と毎回返事をした。拒絶や否定の言葉が送られてくる度に、絶望した。

あの夜は、終わりの見えないトンネルのようだった

結局、朝方までやりとりは続いた。もう始発の電車が走り始める、そんな時間になっていた。
そんな時に彼から言われたのだ、「始発に乗って帰れば」と。
どうにも出来ない私はそうすることにした。始発より何本か後の電車に乗り込んだ。正確には始発ではないが、ほぼ始発である。
別にそれをしたからと言って、彼が私を許すとか何か状況が変わるわけではないのもわかっていた。でも、やはりそれくらいしか、出来ることがなかったのだ。
電車に乗って座っていると、窓から日が差し込んできた。夜がとっくに明けていた。駅までの道のりは、まだ暗かったのに。

眠れない夜を画面越しに過ごした彼とは、数か月経った今も関係が続いている。それはきっと、あの夜があったからだ。
もしも、あの時私がすぐに寝てしまっていたら、違う世界線が存在していたであろう。仮定の話をしても仕方がないが。
私にとって、あの夜は永遠だった。終わりの見えないトンネルのような。それでも、自分自身が諦めなければ、光が差す、こともある。