透明の傘は、クリアに見えすぎてしまう世界を柔らかな光で包んでくれる

雨は好きだ。
この世の全てを洗い流してくれるような気がするし、大雨が清々しく感じることもある。雨上がりの澄んだ空気には、深呼吸をして身体全部の空気を入れ替えたい気持ちになる。
ただ、わたしは気圧の変化に弱いので、頭痛が必ずやってきてしまう。そこだけは、嫌いだと思う。
人間みたいに、好きな側面と嫌いな側面があるのだ。
去年は梅雨の始まりが非常に遅かったらしい。平年は6月7日前後に始まり、7月中頃まで続くそうだが、去年の関東地方では6月21日ごろに始まった。その分短い梅雨に終わったようだが、今年はどうなるだろうか、といまから考えを巡らせているのは、6月にお墓参りと食べ歩き旅行の予定を入れてしまったからだろうか。
これは去年のこと。
いつもお墓参りの帰りに泊まるホテルから、【期間限定宿泊料金15%OFF】というメッセージが届いた。家族みんなで喜んだのである。
(家族に会えて、お得に泊まれて、良いじゃないか!祖母の誕生日も近いし、父の日だって近い、祖父母の結婚記念日のお祝いもできるじゃあないか!)
そして、旅行中にふと核心に迫ってしまうのだ。いまにも雨が降り出しそうな曇天に、翌日の雨予報。
(あれ…これって梅雨時期にお客様が減ってしまうから、ホテルの稼働率を上げるための経営戦略では…!?)
と。
それに気づいたわたしが、すぐに家族に共有したら、家族は笑って、「あんたって子は頭ええなあ」やら、「気付いてたけど気付いたらあかんとこやったでそれ」などなど、楽観的で物事をどう楽しむかを考え生きている、わたしの家族たちらしさが垣間見える反応が返ってきた。
今年も、もうすぐ梅雨の時期がやってくる。この時期は土砂崩れなどの大雨災害がどこかで起こって心を痛める人も多いだろう。雨で頭痛が起こるから、気圧で調子を崩すから、苦手なんだという人も。わたしも、梅雨時期はどうしても精神的な不調が表に出てきやすくなり、鬱々とした気持ちが晴れないことも多い。
だけど、そんなあなたにも、わたしに対するリマインドとしても、雨を楽しむおすすめの方法をひとつご紹介したい。
透明のビニールの傘を持って、小雨〜雨上がりに散歩してみる。カメラを持っている人はカメラを、スマートフォンのカメラ機能でも、もちろん構わない。公園に咲いている紫陽花や雑草を見てほしい。雨粒がついてキラキラしている植物たちはこれ以上なく綺麗で、生きている瞬間を見せてくれる。
そしてもし晴れ間が出ていれば、今度はコンクリートの地面を見てほしい。地面の水溜まりには青空が映って、素敵な写真が撮れるはずだ。
わたしが、鬱でしんどかった時に、スーパーでの買い物帰り、下ばかり見て歩いていたら、地面に青空が広がっていて感動した。是非、その体験をあなたに。見てみてほしい。時には空を見上げてみて。虹が出ているかもしれない。
透明の傘は時にクリアに見えすぎてしまう世界を、柔らかな光で包んで見せてくれる。雨粒が傘を弾く音も、雨粒がついてなんだか幻想的に見える傘越しの世界も良いものだ。
あくまでわたしの梅雨の楽しみ方だが、この時期が苦手だった私が、好きなところもあると気付けたのだから、梅雨嫌いのみなさんに小さなひとつでも、刺さると嬉しい。梅雨時期が好きなみなさんには、もっと楽しめる梅雨の過ごし方を是非教えていただきたい。知らない梅雨をわたしも見てみたい。
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