家に帰った恋人からの返信が途絶えた。この心配は過剰か、支配か

私の家に滞在していた恋人が自分の家に帰った。自分の家に着いた恋人から、鍵を忘れたと連絡が来た。
忘れっぽい人なので通常営業なのだが、ここからがいつもと違った。いつまで経っても帰って来ない。悪天候だから時間がかかっているのだろうか。連絡しても、鍵を忘れたというやりとりの後から既読すら付かない。私の恋人はあまり元気な人ではない。季節的なものもあり、いつもより鬱っ気が増している。まさか…。
私は焦った。でも探しに行くには土地勘がなく、時間も遅く、なにより天気が悪すぎる。とりあえず終電に乗って、我が家に着くであろう時間まで待とう。
待ったが、進展は何もない。何処かで倒れているのか、何かに巻き込まれたのか、病院に運ばれたのか、衝動的に何かしてしまったのか、不安は尽きない。ネカフェなどにいたら、スマホの充電も出来るだろうし、何かしら連絡が来るはずだ。何かあったから連絡も付かず、帰っても来ないわけだ。特に衝動的に何かしてしまったのであれば、発見が早ければ早いほど助かる確率が上がる。対処は早いに越したことはない。
緊急搬送等の場合、私ではなく遠方のご親族に連絡が行く可能性の方が大きい。でも遠方のご親族は私の連絡先を知らない。そして恋人とご親族はあまり仲が良くない。下手にこちらからご親族に連絡をすると、恋人が気まずくなるだろう。ご親族への連絡は最終手段とした方が良さそうだ。
こういう時はやはり警察だろうか。そう思い、近所の交番に電話してみた。交番のお巡りさんがパトロール中らしく、最寄りの警察署に繋がった。事情を話すと親身に寄り添ってくれた。電話口の警察官からも恋人に電話をしてもらったが、やはり繋がらない。まだ時間がそこまで経っていないため警察が動けるわけもなく、今晩は様子見でということで電話は終わった。
万策尽きた。私は心配してずっと泣いているわけだが、恋人は我が家まで来る気力がなくなり、何処かのネカフェで休んでいて、そしてスマホの充電が切れて連絡が取れないというのが現実的だと思う。実際、よく恋人はネカフェで休憩する。でも、もしかしたら……という考えがどうしても拭えない。私が知っている恋人の連絡先やSNSの全ての機能を使って連絡を入れている。私がスマホの充電が切れた状態でネカフェにいたら、パソコンで何かしらのSNSにログインして閲覧するだろう。そこで連絡に気付くはずだ。それらがないということは、だ。
夜、悪天候の中、鍵を忘れて家に入れないという一報を最後に、連絡が取れなくなったら、私がどんな思いをして、何を考えてどう行動するか、そこまで思いが至らないだろうか。もしくは、私が恋人にとって、そんなに大切な存在じゃないのかもしれない。
空が白み始めてきた。私は徹夜をしたことがない。寝ないと使い物にならないロングスリーパー体質だからだ。夜は明けてラジオ体操の時間になったが、もう体が限界だ。体が限界で寝落ちするかもしれないとLINEを入れて、寝落ちした。1時間ほど気絶して、スマホを見ると連絡が入っていた。近所のビジホに泊まっていたそう。朝になってからフロントで充電器を借りられると気付いて充電したそうだ。
私が心配しすぎなんだろうか。私からすると恋人の行動はあり得ないのだが、恋人からすると私の心配、考え方が理解できないだろう。私はそういう風に家族や周りから心配されてきた経験から、同じように心配している。でも、心配と言いつつ縛り付けているだけのような気もする。
または、こうするはずという期待を裏切られた怒りを心配という形でぶつけているのかもしれない。恋人を信頼していないからなのではないかとも考えられる。普通に心配するでしょ、いや、心配の皮を被った支配なのではという二つの思考で、思い出す度に具合が悪くなってしまう。
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