職場の先輩が着ていたニットの鮮やかなロイヤルブルーに一目惚れした。
今思えば、先輩に「その服どこで買ったんですか?」と聞けば早かったのだが、その美しい服を手に入れてしまったら私は着倒すだろう、ペアルックになってしまったら先に着ていた先輩に申し訳ない、という謎の理由で聞くのを躊躇した。その日から私の「ロイヤルブルーの服探し」が始まった。

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ロイヤルブルーの色味に強いこだわりが自分の中にあった。お店をまわるが、青い服は見つかっても、理想とするロイヤルブルーにはなかなか出会えない。これかな、と思っても、試着してみるとなんだか求めている華やかさが足りなかったり、ちょっと青味が強すぎたり。某タレントが「白って200色あんねん」と発言していたが、それなら一体青は何色あるのだろうか。ピンとくる服探しは長い道のりになるな、と途方に暮れた。

私は元々服には全く執着がない。肌が覆えて最低限の清潔感があってTPOをわきまえられていれば良いだろう、と思っているから、中高生の時に買った服を20代半ばになっても何着も着用し続けている。服を買うならそのお金で本を買ったりおでかけしたりしたい、という思考の持ち主だった。こんなに特定の服を熱望したのは人生初の経験だった。

思えば、成人式で着た振袖もロイヤルブルーに近い鮮やかな青だった。当時は王道の赤色の可愛い振袖が着たかったのだが、残念ながら自分に合う赤の振袖がなく、決めたのがロイヤルブルーの振袖だった。イメージしていた可愛い振袖からはかけ離れたけれど、気品高く凛々しい青は私の肌色にも合い、こっちのほうが私らしかったかもしれない、と思えた。
20歳、一度きりの節目。家族と過ごしたハレの日の思い出の記憶は、ロイヤルブルーの色と共に今も色褪せない。

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先輩のロイヤルブルーに一目惚れした晩秋から、冬が過ぎ、春も過ぎ、夏服で見つからなかったらあきらめようかな、と思っていた矢先に、ついに念願の出会いを果たした。

母から「さらっとした麻のシャツがあるから見に行ったら?暑い夏にも着やすそうだし」と言われて向かったお店で、数色展開の半袖シャツの中にそのロイヤルブルーはあった。試着してみて満足、仕事にもプライベートにも着られそうだ。少々値段のするものだったが、これを逃したら運命の出会いはもう訪れないかもしれない、と購入を決めた。

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それから数年、言葉通りにそのシャツを「着倒して」いる。部屋に干してあってもたんすの中にしまわれていても、ロイヤルブルーは特別なオーラを放つ。さすがに毎日着たらおかしいだろう、と週1回程度の着用に留めているが、そのシャツを着た日は朝からさわやかで、よし頑張ろう、と士気が高まる。服って、色って、こんなに元気をくれるものなんだ、と人生の楽しみの幅が広がった気がした。

今年も夏がやってきた。ロイヤルブルーに励まされる季節。暑くてだるい夏だけど、心には涼しい風が吹いている。