私は数学と理科が大の苦手だった。
昔は得意だったのに、いつのまにかできなくなっていた。
それでも困ったことに理科が大好きだった。

得意科目のある文系に進むべきだってことくらいわかっている。
それでも、高校の時、悩みに悩んで理系を選択した。

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しかし、安易な選択を私はすぐに後悔した。授業内容が難しすぎたのだ。周りがいとも簡単に問題を解いていく様子に劣等感を覚えるようになっていった。
結局、入試の時点でも理解が追いつかず、浪人生活を送ることになった。

浪人時代もなかなか数学と理科を理解することができない。だんだん私は無事大学生になれるのか不安になってきた。
文系に変更することを何度も考えたが、どうしても理系に進みたい。その想いだけは良くも悪くも変わらなかった。

そんな時に見つけたのが面接での入試だった。

私は面接が大の得意で、かつ理系に進みたいという熱い思いをぶつける自信だけはあった。無事に一般入試では合格は難しかったかな、と思われる大学に合格を果たした。

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それでも入学まで毎日のように不安だった。大学の授業についていけるだろうか。卒業が無事にできるのだろうか。「喋り」だけで合格してしまった私には難しすぎる大学だったのではないか。やっぱりきちんと入試を受け、身の丈にあった進学先を見つけるべきだったのではないだろうか。

しかし、そんな不安は入学とともにすぐになくなった。
大学の授業が面白かったのだ。もちろん難しいことに変わりはない。ついて行くのが難しい時もある。しかし、そんな難しさを超えるくらいに毎日が楽しい。あの時得意だからという理由だけで文系に変えなくてよかった。理系に進んでよかったと心から思うことができた。

無事に単位を取得でき、卒業にも十分な成績を取ることができた。それどころか、大学ではいわゆる頭がいいと言われる人たちの仲間入りを果たした。

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そんな時、恩師から、英語で研究発表をしないか、というオファーがあった。昔の私だったら不安で断っていたかもしれない。しかし、やりたいと心から思えるならやり遂げられる、そう私の気持ちは変化していた。

研究発表も無事好評を博して終わり、論文を書くことができた。楽しいって魔法なんだな、と思った瞬間だった。

そんな私は今研究者になった。高校時代の理系科目が苦手だった頃を考えられないし、高校時代の担任からもいまだに驚かれる。もちろん研究者として生きるのは難しい。それでも楽しいからこそきっとやり遂げられる。今の私にはそう信じることができている。