ボランティア仲間に乳がんのサバイバーの方がいる。先月一緒に活動したときに、治療をしていた頃の話をしてくれた。

乳がんの治療で使われる抗がん剤は脱毛の副作用があり、当時はウィッグを使用していたこと。自然に見えるウィッグは人毛を使ったもので、値段が張ること。値段が張るとはわかっていたし、治療の見通しが立っていないからお金を使うことに抵抗もあったけれど、自分のきもちを保つために必要なお金だったと思っていること。

その話を聴きながら、過去2回参加したプロジェクトのことを考えていた。

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今わたしの髪は肩を少し越えて、肩甲骨が隠れるギリギリくらいの長さがある。こんなに長くするのは高校生以来だ。

理由①、髪を結ぶ必要がある環境にいるから。理由②、卒業式の髪型を決めていないから。理由③、ヘアドネーションに向けて伸ばしているから。ヘアドネーションをするのはこれで3回目で、過去の2回はそれぞれ結構思い出深い。

1回目の参加を決めたのはまだ小学生だった頃。好きなバンドが動物愛護のチャリティープロジェクトを立ち上げたことがきっかけだった。社会貢献は誰にでもできるということ、直接的なアクションでなくても間口を広げることも社会貢献とされ得ることを知った。

当時わたしは自力でお金を稼げる環境になかったから、そこに直接寄付をして自分のしたこととして誇ることに違和感があった。

そこで、わりと長かった髪を切って寄付することにした。前髪もつくったから40cmくらい切った。一房自分で切らせてもらった。急に軽くなった頭にふわふわと浮いて飛んでいきそうな気分になったのを覚えている。

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2回目は、1回目を終えて少ししてから忙しくてずるずると伸ばしていた分。中高の生活を捧げたと言える部活を引退した数日後に切った。

最後の方は引退したら切ると唱えながら生きていた。わたしなりのけじめだった。髪を切ったら失恋だと短絡的に思われるのは腹立たしいけれど、あのときのわたしは部活との相思相愛を終えたと思った。

印象深かったのはそのあとで、わたしに影響されたと言ってヘアドネーションをする同級生が何人かいた。嬉しかった。よいことをするには運やタイミングや縁の力も必要だと思っているけれど、あのときのわたしには運もタイミングも縁もあった。

間口を広げることも社会貢献だと感じていた最中、わたしも少しだけそういう存在に近づけたのではないかと思うと、世界がキラキラして見えるくらい嬉しかった。

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3回目は今通っている大学を卒業したタイミングで参加しようと計画している。こうして文章にも書いているし、周りの友人にも話している。

別に参加するに至るひとがいなくても、知ってもらうことでも何かに繋がる可能性があると、この数年間の経験から学んできた。だから、できる限りいろんな方法で発信していこうと思う。最近パーマをかけたら髪の毛の話をする機会が増えて、たくさん話せて嬉しい。

わたしは大学を卒業と同時に幼い頃から就きたかった職業に就く。小さい頃からの夢を叶えて切る髪の毛が幼い誰かの日々を少しでも明るくできるのなら、それはきっと素敵なことだろうと信じている。