私が“ヘアドネーション”という言葉を知ったのは、高校生のときだった。
友人が長い髪の毛をばっさり切ってきたので理由を聞くと、ヘアドネーションをしたというのだ。
子供用のかつらや医療用ウィッグに使われる「ヘアドネーション」
私はその後、ヘアドネーションについて興味を持って、調べてみた。約30cm以上の髪の毛をヘアドネーションの協会に送ると、それが子供用のかつらや医療用ウィッグに使われるということだった。人工のかつらやウィッグよりもなじみやすく、需要があるそうだ。
ちょうど私も2年以上髪の毛を伸ばし続けていたので、いい機会だと思い私もヘアドネーションをすることを決めた。まずは、協会に協賛しているヘアサロンを探した。幸いにも自宅の近くにあったので、そこに行くことにした。
一度に30cm以上も髪の毛を切ることには勇気が必要だったが、その反面楽しみでもあった。短い髪の毛の私は、どんな自分になるのだろう。そんな期待があった。
そして当日、サロンに行った私は髪の毛を切り、超ロングヘアからボブスタイルへと変身した。切った髪の毛は、束ねて協会に送ってもらった。私は切ってもらった髪の毛に「さようなら」と「ありがとう」を言った。そして私は、軽くなった頭にわくわくしながら帰路についた。
ヘアドネーションをして、人に役立つことをしたという満足感があった
ばっさり髪の毛を切った私は、心まで軽くなっていた。わくわくした気分は、これから受けるであろう人からの評価と、人に役立つことをしたという満足感からだった。
何か月かすると、協会からお礼のリボンとカードが届いた。どうせ捨ててしまう運命なら、有効に使ってもらおうと軽い気持ちで始めたヘアドネーションだったが、実際にお礼が届くと、幸せな気持ちでいっぱいになった。
最初にヘアドネーションをしてから約2年。そろそろ髪の毛を切りたくなる長さになったが、私は切るのをためらっていた。それは、ヘアドネーションをするにはまだ長さが十分ではなく、協会に送っても使ってもらえない可能性があったからだ。
一度体験した温かい気持ちをまた経験したい。そんな思いから、切ることを悩むまでになっていた。結局、長さが足りないままでも切ってしまったが、それは美容師さんたちの練習や実験に使ってもらうように寄付をした。
誰かの役に立てるヘアドネーションをたくさんの人に知ってもらいたい
ヘアドネーションをしたことで、切った髪の毛の新たな使い道を知った。そして、人の役に立つことの楽しさを知った。人に貢献することで、私は自分の新しい価値を見出していた。
私は、ヘアドネーションをもっとたくさんの人に知ってもらいたい。そして、たくさんの人にドネーションをしてもらいたい。そんな気持ちを持ち始めた。SNSでヘアドネーションをしたことを報告すると、思いのほかいろんな人から反響があった。そして、実際に私の投稿を見て、ヘアドネーションをしてくれた人もいる。
それからまた調べてみると、ヘアドネーションの協会はいくつか団体があり、それぞれ設けている長さの基準が違うことが分かった。今度はどこの協会に送ろうか。私のわくわくは広がっていく。