ぎこちなくてドキドキした夜。初めての恋人と浴衣で行った花火大会

今のパートナーとは、随分と長く関係が続いていて、何度も春も夏も秋も冬も一緒に過ごしてきた。でもこれまではそんなこと無かった。昔の彼氏とは、1年だって続くことは無かった。だからこそ、いまだに記憶に強く残っている思い出もある。
夏の思い出として、今でも私に強く残っているのは、中学生の時。初めて、恋人と呼べる存在の人と、地元の花火大会に行ったこと。別に、まだ未練があるとかではない。でも、あれは本当に青春だったな、と今でもたまに思い出してしまうくらいには大切な思い出。
他のエッセイでも書いたけど、中学2年生で同じクラスになった綺麗な顔立ちの彼。席が隣になることは無かったけど、自然と不思議と仲良くなって、お互いに弄り合うような関係性。純粋な異性の友人関係なんて信じていなかった(今でも信じていない)私にとっては、 もちろん彼は恋愛対象で。どこからともなく、彼に惹かれていった。
色々あったけど、途中から多分両思いだろうなってお互いに気がついていたと思う。でも一歩が踏み出せなくて。そして中学2年生の終業式の日。結局、進展の無かった関係性にひとり落ち込んでいたのも束の間。いつしか日常になっていた彼とのメールのやりとりの中で、 彼からの告白。晴れて彼の恋人になった。
3年生ではクラスが離れてしまったけれど、積極的な彼のおかげであまり寂しい思いはしなかった。そして、いよいよやってきた夏休み。あまり大きくない地元の花火大会に、彼と行く約束をした。でも、知り合いと会う可能性も高いし、まだ恥ずかしくて、彼と2人で行く勇気が無かった。だから共通の友人を誘って、4人で。一見ダブルデートのようだけど、 友人2人は付き合っていないため、少し申し訳なかったなという思いと、もちろん感謝もした。無事、親には 友人と行くという言い訳も出来たし。
花火大会当日は、もちろん浴衣を着て。友人と2人、私は彼の到着を緊張しながら、近くのショッピングセンターで待ち合わせ。合流すると、友人は気を利かせて私たち2人にしてくれた。本当によく出来た友人である。
いつになくぎこちない2人。小さなショッピングセンターには、プリ機があって、プリクラを撮ろうという話になった。ぎこちなく、何となく会話も弾まないし、顔も作れないまま。
3、2、1、、カシャッ
途中彼が近づいてきたのを皮切りに、恥ずかしさも残しつつ、残りの数枚を楽しんだ。
会場についてからは、知り合いに会わないかビクビクしながら、回っていく。せっかくの花火大会の記憶は正直あまり残っていなくて、強く残っていたのは、その前のぎこちない空気感の2人。恥ずかしくて、ドキドキして、嬉しいような帰りたいような。夏らしい青春の 1ページだったな、と思う。
その後も、たしか彼の誘いで、彼の親戚家族にお邪魔して別の街の夏祭りのようなものに行った記憶がある。その時は、家の前まで、彼の両親が車で迎えにきてくれて、後部座席で緊張しながら、会話をして会場へ向かった。会場へ到着すると、彼の親戚が何人も集まっていて、公開処刑じゃないか!と少しの戸惑いと、恥ずかしさを感じながら、なるべく集団の後ろでひっそりとしていた。親戚には、もう少し年の若い女の子なんかもいて、彼と親しげで、嫉妬心がうまれなかったかと言われれば嘘になる。
でも彼はそんな時でも、私をちゃんと気にかけてくれていたし、両親や親戚の人たちも優しく接してくれた。肝心のお祭りの内容は、またしても覚えていないのに、唯一私の頭の中に浮かぶのは、家族に囲まれて、普通なら恥ずかしがりそうなものなのに、私の手を繋ぐ彼。 前から、後ろから、手をつないでいる姿を見せるなんて、とビクビクしている私を他所目に。
夏、夏休み、夏祭り、花火というのは、ただでさえ、心躍るのに、家族とでも、友人とでも、 恋人でも。それが好きな人が一緒にいれば格別だ。
今のパートナーには少し申し訳ない気がするけれど、やっぱりあの、「初めて」恋人と、浴衣を着て花火大会に行くという時の気持ちは、一度しか味わえないものだし、好きとか嫌いとかじゃなくて、大切に胸にしまっておきたい思い出。
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