否定的だった浴衣を選んだ日。彼の笑顔が特別な夏にしてくれた

夏といえばお祭り、プール、肝試しなど様々なイベントがありますが、私は昔付き合っていた彼氏と花火大会に行った際に一度だけ思い切って浴衣を着た事があります。
花火大会は幼い頃から何回か参加した事がありましたが、参戦する際はいつも決まってTシャツや短パン、またはワンピースといったラフな格好でした。
当時は涼し気で華やかな浴衣に身をつつみかんざしで髪をくくった女の子達の姿を横目に見つつ、自分がああいう格好をする事は恐らくないだろうなぁと半ば他人事でいたものです。
夕方といえど夏はまだ暑いし、身動きが取りづらい上に足元が下駄なため少し歩いただけでひっくり返ってしまいそうです。
それに、持ち歩くのも巾着?みたいなあんなに小さい袋に一体何が入るというのでしょうか。
そんな風に謎の反感を浴衣に対して抱いていたのですが、大学生になって初めての彼氏ができたタイミングでその考えを少し改める出来事があったのです。
ある日、相手としていたLINEのやり取りの中で、次はどこに行こうかという話題になりました。時期的にお互い大学の夏休みに入ったタイミングであったため、せっかくなら何か夏らしい事をしたいねという流れになったのです。
夏らしいイベント……今まで青春をそこまで謳歌してこなかった陰キャな自分には該当するイベントがパッと思い浮かばなかったため、ネットで「夏 デート」という形で検索をかける事にしました。
打ち込むと、検索結果がズラーッと表示されたのですが、中々ピンとくる物を見つけるのは難しかったのです。
プールはちょっと体型に自信がないしロクに泳げもしないしどちらかというと水が苦手だから嫌だな。
お化け屋敷は私は好きだけれど相手がそういう系が苦手だと言っていたから難しいかも……と様々な候補が出てきたのはいいものの、こちらの条件に合いしっくりくるようなイベントは中々ヒットしません。
うーんと唸りつつ暫く画面と睨めっこをしていたのですが、ふと視線を移した先に「花火大会」という文字が目に入ってきたのです。
これだ!その瞬間、心の中で一人ガッツポーツを決め込みました。
花火大会ならそこまで大きな音が苦手、とかでなければ比較的気軽に楽しむ事ができるし、他の物に比べてハードルが低い!それに、何と言ってもめちゃくちゃ夏らしい!
思い返せば幼少期に家族で参加した花火大会の会場にもカップルが沢山いたなぁ、としみじみと思い出しました。
早速、相手にその旨を提案してみると快い返事が返ってきたため、私達は日程的にも参加できそうな隅田川の花火大会に一緒に行く事になったのです。
予定が決まった後、その件を友人に話したところそれなら浴衣を着たらいいんじゃない?との提案を頂きました。
正直、それまで私はお気に入りのワンピースを着ていこう、くらいの気持ちでいたので、その提案には一瞬驚きましたが、そういえば花火大会を調べた時もデートの場合彼女は浴衣で行った方が盛り上がる!と書いてあったなぁという事を思い出したのです。
昔はわりと浴衣に対して否定的な考えを持っていた私でしたが、初めての彼氏との花火大会デートという事で友人の一押しもあり、この度張り切って浴衣を着ていく運びとなったのでした。
とはいえ自分で購入し着ていくのはハードルが高かったため、会場へのアクセスが比較的良い着付けレンタルの店を予約し、待ち合わせの前にそこへ向かい晴れて花火大会仕様へ衣装チェンジを行ったのでした。
そういった店の利用は初めてであったため、来店前は結構緊張しましたが、担当のスタッフは丁寧で物腰も柔らかく、数多ある種類の浴衣から自分に合いそうな物の相談にも乗ってくれ、髪型も可愛らしいお団子に結ってくれました。
やはり普段の服装と比べれば動きづらく、足場も不安定であったためレンタル屋から電車を乗り継ぎ待ち合わせの場所まで移動するだけで結構な労力を使いましたが、まぁそれも青春の一幕といえるものでしょう。
事前に告知をしていなかったため、想像とは違う浴衣姿で待ち合わせ場所に現れた私の姿を見て相手はかなり驚いていましたが、評判は上々であったため、ああ、やはり少し苦労してでも今回浴衣に決めてよかったなぁと思いました。
しかし、隅田川はとにかく人が多かったですね。
帰宅した際足はもうボロボロでしたが、疲れた分だけかけがえのない経験になったように感じます。大変そう、という理由だけで遠巻きにせず、何事も一度挑戦してみるのはやはり大切な事だと改めて感じた経験でした。
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